このサイト(起-動線)は2002年7月4日(木)にオープンしましたので、丸10年が過ぎました。日頃のご愛用・ご愛読に感謝いたします。世話人自身の仕事・生活環境が変わっていく中で、活動の目的である「個人の意志決定支援」がどこまで果たせているか心許ないのですが、10周年を記念して、2週ないしは3週に分けて、これまでこのコーナー(コンセプトノート)に投稿した426本のノートを振り返り、再紹介がてら「まとめ」を作っておきたいと思います。
今週はメインストリームというか、研究テーマの大きな流れでまとめてみました。
よい意志決定って何?どうすればいいの?
この問いと答えを、答えとはいかないまでも答えに向かってもがき考える過程を、興味を持ってくれる方と共有したいというのがサイト開設当初からの変わらない思いです。意志決定とは何か、それが「よい」とはどういうことなのか、「よい意志決定に必要な力は何か」といったあたりは、9周年にまとめた『よい意志決定のための能力モデル (1) (2)』(2011/7) から変わっていません。現在の興味はその力をどうやって伸ばせるのか、といったところにあります。
論理的に考え尽くして決めるなど、ムリ!(直感の役割って?)
この思いも、サイト開設当初から抱えていました。次の食事を選ぶといった小さな選択ですら、厳密に筋を通した選択をしようと考えれば考えるほど変数が増えていく。まして転職や起業のような不確定要素の多い選択を論理的にくだし得るはずがない。当時はうまく言語化しきれていませんでしたが、『論理的に正しいことだけからは、意志決定を導けない』(2010/7)としたまとめたような思いです。
その思いが「直感」への興味へとつながりました。『直感の構造』(2003/8)を皮切りに、『直感の鍛え方』(2004/5)、『決断を試す』(2004/7)、『直感の中を覗き込む』(2007/3)、『「近道」的思考を磨く』(2012/6)といったノートで取り上げています。もちろん論理的な思考が重要であることは前提で、その役割については、たとえば『倫理的な想像力と論理的な思考力』(2007/3)、『論理的思考の役割』(2009/6)に書きました。
参考図書:『決断の法則』『医者は現場でどう考えるか』
アテにならないようでアテになる、情動という「もう一つの理性」
直感は情動(と、それが引き起こす感情)という形でわれわれの意識に上ってきます。そこで自然と研究テーマは意思決定と感情の関わりに広がっていきました。この分野でめぐり合ったのが「感情を思考に統合して行動を選択できる能力」を感情的知能と定義した、EI理論(EQ理論)です。感情に関するノートは、感情的知能を2010年から研究テーマに掲げたこともあり、『気持ちを表す語彙を増やす』(2009/12)以降一気に増えました。数が多いので、直接感情的知能に触れているノートに絞って紹介すると、こんな感じです:
『純粋理性の限界(感情が働かない患者の話)』(2009/12)、『「EQの六つの基本原則」』(2009/12)、『「いやな感じ」「いい感じ」にも意味がある』(2010/2)、『6秒間で思慮深さを取り戻す』(2010/2)、『結果が出たら、しっかり喜怒哀楽しよう』(2010/3)、『「それ」を感じた瞬間に書きとめておく』(2010/5)、『「気持ち」を構成するもの』(2010/10)、『スキルとしての感情マネジメント』(2010/10)、『感情と思考とは同時に働かない』(2010/10)、『感情は自分が創り出している、と考えてみると』(2011/1)、『毎朝、鏡を見るように』(2012/3)
お釈迦様は偉かった!〜初期仏教から感情・思考のマネジメントを学ぶ
感情的知能の根幹にあるのは自己認識力です。自分(や相手)が何を感じているかを微細に感じ取る。その技術が、実は初期仏教で極められていたらしいことを教わり、これも研究テーマに加えました。ヴィパッサナー瞑想という手法、それがめざすマインドフルネスという状態というか境地、ほとんど似た状態をめざすセラピーの方法論(ACT)などなど、より明晰な状態で意志決定をするために必要な要素をたくさん学びました。まだまだ体得もノートへの反映もできていないのですが、次に挙げるノートあたりが、学んだことのメモです。『6秒間で思慮深さを取り戻す』(2010/2)、『「いま、選んだ」と気づく』(2010/4)、『怒ったら、怒らないこと』(2010/7)、『「今・ここ」にいられない症候群』(2011/1)、『気づきの鐘』(2011/1)、『Googleの「心内検索」トレーニング』(2011/4)、『EQを高める六識日記』(2011/12)。『勘をよくする』(2003/9)は、中村天風という人の本を読んだけどよく分からなかった、という内容なのですが、今回再訪してみて、著者の言いたいことを理解する素養が足りなかったことが分かりました。
よし、「知情意」でいこう! 〜 意志決定力をシンプルに
そんな遍歴から行き着いたのが、「知情意」というシンプルな枠組みです。『複眼思考のフレームワークとしての「真善美」』(2009/7)あたりから、およそ「決めるときの心得」を良い三幅対に収めたいという思いがあってあれこれ探していたような気がします。知情意で行くと決めてまとめたのが、冒頭に挙げた『よい意志決定のための能力モデル (1) (2)』(2011/7)です。ほかにも、最近の次のようなノートは、そういった枠組みで考えた産物です。『「明晰さ」の条件』(2011/6)、『葛藤を書きとめる』(2011/6)、『「意思決定日誌」の項目』(2011/8)、『驚く感性、疑う精神、信じる意志』(2012/3)