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コンセプトノート

305. 論理的思考の役割

「THE 21」2009年7月号(PHP研究所)の特集『残業ゼロの「スピード判断」術』に、将棋棋士の羽生善治さんのインタビューがありました。

コンピュータ将棋のプログラムと人間とでは、強くなっていくプロセスが違うそうです。コンピュータが「駒の動かし方を計算して手を決める」のに対して、人間は「理にかなった駒の配置を覚えることによって、不自然なものを瞬時に排除する能力を高める」ことで強くなっていく、と語っています。

ここにピンと来るものがありました。というのは、偶然にも先週似たようなことを考えていたからです。

われわれは、不確実な状況下でも、仮定を置きながらできるだけ論理的に考えようとします。そのメリットについて考えていました。

このような論理的なステップのメリットは、圧倒的に有利(不利)な選択肢が除けるところにあると思います。仮定のブレが影響しないほどに圧倒的な、よい(悪い)選択肢が見つかれば、われわれの選択は楽になります。
恐怖のマネジメント」(仕事と人生に効く、大事なことの決め方・選び方

論理的に考えれば、大外れ(大当たり)を素早く見つけることができる。棋士が定跡を覚えたり、ビジネスパーソンがフレームワークを覚えたりするのは、「理にかなった」パターンをあらかじめ脳にインストールしておこうということ。

同時に心しておくべきなのは、論理的思考が意志決定を助けてくれるのはそこまででしかない、ということでしょう。

理にかなっていない選択肢を素早く外したあと、どのように最善手を見定めるか?羽生さんは「最後は直感」と言います。論理的には甲乙付けがたい選択肢から敢えて選ぶのですから、非論理的な(気取っていえば「超」論理的な)やり方しか残っていないわけです。

ただし、この「最後は」という部分には尋常ならざる重みがあります。「不自然なものを瞬時に排除」してから「最後は直感」で手を指すまでの間、棋士はしばしば長考します。直感で選ぶしかないと言えるにいたるまで、いったい何をどれだけ考え抜いているのか。それを考えると、うかつに「直感で決めていい」とは言えなくなります。論理的思考の役割は決して軽いものではありません。

※ 氏には『決断力』など優れた著作もあります。詳しく知りたい方はこの雑誌か、そういった著作をチェックしてみてください。