カテゴリー
コンセプトノート

208. 直感の中を覗き込む

『アイデアのおもちゃ箱―独創力を伸ばす発想トレーニング』という本で、
「電話が鳴ったら、出る前に発信者を当ててみる」というエクササイズがあります。書評に抜き書きをしておきましたので、興味のある方は読んでみてください。

 このエクササイズについて、書評では以下のように書きました。

理屈が先行するほうなので、「そんなの分かるか!」と反応したくなりますが、四の五の言っていないで、まずは挑戦してみますかね。

 実際に自分の携帯電話でやってみると、なかなか面白い発見がありました。電話が鳴ってから手に取るまでには数秒ありますので、直感を働かせようと思っても、推論をしてしまいます。そしてよく考えてみると、推論のネタは結構あるのです。例えばタイミング(いまの時間は?曜日は?月初か月末か?)、用件(仕掛かり中の仕事の中で電話が掛かってきそうな件は?)、人(電話を掛けてきそうな人は誰?)などなど。いちいちフローチャートを辿って考えたりはできませんが、「直感的な判断」と漠然と考えていたものに、かなり推論が取り込まれていることは感じられます。
 「理屈が先行するほうなので」と書いておきながら理屈で考えず、「そんなの分かるか!」と反応していた怠慢に、気付いてしまいました。

以前に書いた「直感の構造」というノートで、直感を「習慣がくだす判断」と定義しました。

大事な決断に臨んでは、昔から自分が選び取ってきた思考のパターンすなわち「習慣」に聞く。これが「無意識に聞け」とか「直感に頼れ」ということなのでしょう。その場でアタマで考えることは、自分の中で時の試練に耐えて残った思考ではない。だから後から後悔を招きやすい。
直感の構造

この電話のエクササイズは、まさに直感の中を覗きこむような体験ができると思いました。興味をもたれた方は挑戦してみてはいかがでしょうか。