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おカネの法則

  • タイトル:おカネの法則
  • 著者:大竹 愼一(著)
  • 出版社:日本経営合理化協会出版局
  • 出版日:2003-08-22

ミニレビュー

ターゲット読者は経営者のようですが、誰が読んでも、前半の【会社のおカネ】編は株式投資のために、後半の【個人のおカネ】編はもちろん個人の資産形成のために、それぞれ役に立つ内容です。

著者はアメリカ在住のファンドマネジャー。20年超のベテランだそうです。合理的・実用的な視点からの説明が多く、分かりやすい本でした。

例えば【会社のおカネ】編から。
経営の善し悪しを測るモノサシとしてROE(自己資本利益率、当期純利益/株主資本)が使われますが、この数字は2つの点で操作が可能です。

一つは分母に株主資本を取っているため、株主資本を減らして他人資本(借金)を増やすだけで数字が上がってしまうこと。これは、ROEは元来ファンドのように総資産=株主資本であるような事業の収益性を測ることが目的であるため、間接金融の比率が高い日本企業には馴染まないと解説されています。

もう一つは分子の当期純利益が減価償却費を引かれた数字であること。日本企業の減価償却費というのは大きいらしいのですが、減価償却というのは税金を払う都合上の概念であって、その期の現金の流れとは関係がありません。

では、操作されづらい指標として何が適切か。著者はCROA(総資産キャッシュフロー率)をよく使っているそうです。これは
当期キャッシュフロー(税引後の利益に減価償却費を足し戻したもの)を総資産で割って得られる数字。
経営指標として使うには、この式を
(当期キャッシュフロー/売上高) × (売上高/総資産)
のように組み直します。前者はキャッシュマージン、後者は総資産回転率と呼ばれます。

著者は「現時点で利益を上げる二つの原則」を挙げていますが、その二つがまさにキャッシュマージンと総資産回転率です。