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ひらがなで考える商い


ミニレビュー

イトーヨーカ堂グループ(現在はセブン&アイ・ホールディングス)の創始者、伊藤雅俊さんが語る商売道。

上下巻ですが内容は割合に独立しています。上巻が「商いの心構え」一般について。下巻がイトーヨーカ堂グループの60年史という感じです。

謙虚で、心配性で、愚直で、真っ直ぐ。ビジネスに対する厳しい姿勢に、読んでいる側も身が引き締まります。

そういう商人の矜持が垣間見えるのが、著者が冒頭に挙げる「商人の道」。この読み人知らずの詩は著者の部屋に飾ってあるそうです。

「商人の道」
農民は連帯感に生きる
商人は孤独を生き甲斐にしなければならぬ
総べては競争者である
農民は安定を求める
商人は不安定こそ利潤の源泉として
喜ばねばならぬ
農民は安全を欲する
商人は冒険を望まねばならぬ
絶えず危険な世界を求めそこに
飛込まぬ商人は利子生活者であり
隠居であるにすぎぬ
農民は土着を喜ぶ
大地に根を深くおろそうとする
商人は何処からでも養分を吸い上げ
られる浮草でなければならぬ
其の故郷は住む所すべてである
自分の墓所はこの全世界である
先祖伝来の土地などと云う商人は
一刻も早く算盤を捨て、鍬を取るべきである
石橋をたたいて歩いてはならぬ
人の作った道を用心して通るのは
女子供と老人の仕事である
我が歩む処そのものが道である
他人の道は自分の道でないと云う事が
商人の道である

※「政治的に正しい」かといえば、農民、女子供、老人に対してフェアではないかもしれません。ただ、誰かを貶める意図はなく、商人魂を奮い立たせるための比較対照として名を借りたと読むべきでしょうね。