- タイトル:社員をサーフィンに行かせよう―パタゴニア創業者の経営論
- 著者:イヴォン シュイナード(著)、Chouinard,Yvon(原著)、摂, 森(翻訳)
- 出版社:東洋経済新報社
- 出版日:2007-03-01
ミニレビュー
高品質なアウトドアウェア、ユニークな経営スタイル、そして熱心な環境問題への取り組みで知られるパタゴニアの創業者、イヴォン・シュイナード氏の自伝的経営論。
氏は自分で鍛えたクライミング用品を売ることで身を立て、徐々にアウトドアウェアの販売にシフトしていきます。ユーザーが命を託すクライミング用品で高い信頼を勝ち得た品質へのこだわりを、ウェア製造にも持ち込み、成長軌道に乗ります。
しかし普通の企業家と違うのは、氏が筋金入りの冒険家であるということ。自然環境への負荷が軽くなる選択肢があるなら、恐れずに信念に従います。岩を傷める鋼鉄製のピトン、実はナイロンよりも環境負荷が高いコットンなど、いずれも当時のヒット商品を、捨てる決意をしました。そのたびに経営難に陥ります。その困難な道のりを淡々と語っていくところに、職人肌の氏の人柄が見えるようです。
企業として環境への配慮を重ねていった結果、必然的に「持続可能な成長」を目指すことになります。以下に引用するのは、1991年、急成長への依存が原因で経営危機に陥ったシュイナード氏が下した結論。
イロコイ族は、意思決定の過程において七世代先の子孫のことを常に考慮する。パタゴニアが今回の危機を乗り切れたら、あらゆる意思決定を、百年先までビジネスを続けるという前提で下さなくてはならない。それほどの長期間にわたって維持できる速度で、成長を続けていくのだ。(p101)
社員を信じ、自主性を尊重するところはセムコ社CEOの『奇跡の経営 一週間毎日が週末発想のススメ』を、そして超長期的な成長を志向するところは伊那食品工業会長の『いい会社を作りましょう』を想起させます。どの本からも共通して窺えるのは、経営者が自分で考え抜いて選択をしていること。そして人間社会、地域社会、自然環境とのつながりを意識していること。
原書はモノクロの写真が印象的でした。どう和訳されるか興味を持って待っていましたが、かなり原書の雰囲気をよく残した装丁で、安心しました。雑誌「オルタナ」編集長 森 摂氏の翻訳も、シュイナード氏の飾らない筆致をよく伝えていると思います…なんて偉そうに書きましたが、原書は読みかけのまま放置していました。やはり日本語はありがたい。
(参考)
Patagoniaの製品デザイン17の哲学 – *ListFreak
パタゴニアの、環境の理念 – *ListFreak