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成功して不幸になる人びと ビジネスの成功が、なぜ人生の失敗をよぶのか


ミニレビュー

この本で言う「成功」とは、仕事上の成功を指しています。大きな企業の経営幹部になったり、起業して儲けたりという、一般的に「成功した」と見なされている人たちがなぜか「幸せでない」という逆説(原題は直訳すると『成功のパラドックス』です)を掘り下げた本です。

部下には不信を抱き、家庭からは尊敬を受けず、物理的にも精神的にも自分の時間を楽しむ余裕が無い、そんな「成功した不幸な人びと」が生まれるメカニズムが前半に、そしてあなたがそうならないためのテクニックが後半に書かれています。

仕事の成功が人生の幸せに結びつかない(と知りながら成功を追及せずにはいられない)というメッセージについては、こんな感想を持つ人も多いと思います。
「成功もしていないのに成功の先を考えてもしょうがない」
「そういう著者だって、先に成功してメシが食えているからそういうことをいう余裕があるんだ」

わたしも反射的にそう思いました(笑)。しかし、いったん「不幸せな成功」をしてしまうとなかなか降りられないそうなので、いま「幸せな成功」について考えておくことにこそ意味がありそうです。

そこで、多少私見を交えて「成功のパラドックス」を要約してみましょう。

不幸になりたくて成功を目指す人はいないでしょうから、そもそもは誰でも幸せになるために成功を目指していたはずです。ところが、夢中になって成功を追いかけているうちに、成功さえすれば幸せというのは自動的についてくるものだと考えるようになる。そしていつの間にか手段が目的にすり替わり、成功(とそれを維持すること)こそが意志決定の判断基準になってしまう。

このパラドックスに陥る原因は、自分バージョンの「幸せ」を自分で定義してこなかったことにあります。何をもって「成功」と呼ぶのかを考えることは、内省的な作業を伴います。これがけっこう面倒だったり気恥ずかしかったりするので、だいたいは他人の言葉を借りてきて据えてしまいます。

学習と再生をいつまでも続ける人生。そんな人生を送る原動力になるのは、どんな人生を生きるべきか、時間をかけて取り組みたいものは何か、取り組む価値のあるものとは何かというビジョンである。

著者が薦めるのは自分なりの抱負をリストすること。世話人が推薦するのは、もちろん「自分ナビ」を作ってみること。

「自分を活かすカテゴリ」全般に通じる内容ですが、生活の中に「職」を据えて自分の活かし方を考えるという観点で、このカテゴリ。
(2004/1/19)

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