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思いやりの人間関係スキル―一人でできるトレーニング


ミニレビュー

原書の初版は1986年。訳書である本書は1990年の刊行で、同年に出版された第2版を底本としています。1990年といえば”Emotional Intelligence”(感情知能)という論文が世に問われた年。このあたりは、人間の社会的な知性の概念・定義がぐっと拡張された時期だったようですね。

そんな黎明期の本なので、出だしは慎重です。

『思いやりにスキルが必要だという考えに、一部の人達は抵抗を感じるかもしれません。』

「思いやりのスキル化」と書くと、なにか表面的で心を伴わないことのように思えます。もちろん、ソーシャル・スキルが重要と考える人たちの言いたいことはそうではありません。すこし長いですが、本書の重要な前提になるところなのでまとめて引用します:

引用:

 

 単なる「思いやりのある人になりなさい」という助言やお説教は、思いやりをどうやって獲得したらよいのか何も教えてくれません。自分の行動をどう扱ったらよいのか分かりません。思いやりのスキルが明瞭に記述されれば、次のような重要な成果が期待できます。第一に、これらのスキルをどの程度持っているか評定することができます。第二に、欠けているスキルが評定できれば、そのスキルを発達させるために、自分一人で、あるいは訓練者と一緒に、訓練を積んだり練習したりすることができます。第三に、スキルを獲得し、スキルの構成要素について知っていれば、思いやりのある行動を維持することができます。
 「思いやりのある行動」という、絵空ごとか魔法のように聞こえるものが、一つひとつの具体的なスキルヘ移されるのです。こうすることで、思いやりのある行動を実際にコントロールできるようになるのです。
(太字は引用者による)

本書では人間関係のスキルを10ほどのカテゴリに分け、47の練習問題と10の実験(実生活の中で試すべき練習問題)を提案しています。

惜しむらくは、その約10のカテゴリと各カテゴリの構成がやや分かりづらく、ミニ書評のなかで紹介するのが難しいこと。練習問題46が本書のまとめ的な位置づけなので、練習問題の紹介も兼ねて、これを引用しましょう。

次の一覧が「思いやりのスキルの領域」として定義されているもので、おおむね1つにつき一章が費やされています。そのそれぞれについて、自分の強みと弱みを書き込んでみるのが「練習」の中身です。

人間関係に持ち込んでいるものを理解する
私自身をあらわにする
報酬を与える聞き手となる
話し手を助けるよう反応する
最初の出会いを作る
人間関係を選択する
人間関係を深める
自分を主張する
怒りを管理する
争いを避ける、争いを管理する

タイトルから中身がある程度想像できるものもあれば、そうでないものもあります。こういった分かりづらさは、冒頭で述べたように、社会技能という概念をとらえる枠組みがまだできていなかった(いない)という事情にもよるしょう。ちなみに訳者の相川先生は、この数年後に感情にかかわる行動特性を評価する枠組みを開発されており、それにはソーシャル・スキルがしっかり組み込まれています。

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