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わが子に「お金」をどう教えるか


ミニレビュー

著者は小・中・高一貫のエリート養成塾の主宰。現役の講師が、子どもに接しながら考えてきた「まともな金銭感覚を得るために親がなすべきこと」(裏表紙より)をまとめた新書です。小学生の親として興味深く読みました。

ジャンルで言えば「道徳」に属する内容が多いと思います。特に『「お金」は「どれだけ稼いだか」という金額ではなく、「どのように使ったのか」という使い道で人間の価値が決まる』(あとがきより)というスタンスには共感しました。

一方、その使い道として称賛されているのが「寄付」「募金」だけなのが気になります。著者は1995年の阪神大震災のときにボランティアに駆けつけたり支援物資を送ったりした人を称賛する一方で、ゼネコン株が上がったことについてはこのように描写しています。

引用:

いま、大学生に就職先として人気の業界である金融関係者のなかには、はじゃぎまわる下品な人間たちが多数いました。目先のお金のことしか考えられない、卑しい人間たちです。
 この日の東京証券取引所では、ゼネコン株が全面高になりました。
 私は、いまだに当日の新聞の夕刊、翌日の朝刊が忘れられません。多数の悲惨な光景の写真が紙面を占めるなかで、株価のページの欄には株価が値上がりしたことを示す白い三角の印があちらこちらで踊っていたのです。(p119)

ゼネコンの株など買うのは不謹慎なので買い控える(と子どもに教える)べきでしょうか。株価が上がるということは企業の体力が増す(資金調達が容易になる、その他の経営資源の確保が容易になる)ということ。復興のために活躍すべきゼネコンの株価が上がったということは、個人や組織からの応援と読み取ることもできます。

そもそも、高くなったゼネコン株を買って儲かるとは限りません。投資が著者の言う意味で卑しい行為となるのは、値上がりしたところですかさず売り抜けたり、得た配当を自分のためだけに使ったりした場合でしょう。そこまでを含めて「お金の使い道」と考えるべきであり、募金は貴くて株式購入は卑しい行為だと子どもに教えるべきだとは思いません。緊急に必要な物資や資金を寄付すると同時に、ゼネコンの応援を(株式投資を通じて)行ってもよいと思います。そしてその程度のことは、小学校高学年であれば十分に理解できます。

……そんなこんなを含めて、タイトル通り『わが子に「お金」をどう教えるか』を考えさせてくれる本でした。