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死ぬための教養


ミニレビュー

■ 死に向き合うために必要なのは宗教でなく教養
いきなりあとがきの最後の一文から引用してしまいます。

引用:

死への考察は、人間の最高の興味の対象であろう。

死ぬことを考えるとどきどきします。もちろん誰だって今日にも死んでしまうかもしれないし、その可能性を認めているからこそ生命保険にも入っているわけですが。

この先どうしようかなあと考えて、何ステップか考えを進めてしまうと必ずぶつかるもの、それが「死」です。

「人生の目的とは何だ?」
「生きがいを見つけることだ」
「生きがいとは何だ?」
「いつ死んでもいいってこと・・かな」
「じゃあ『死にがい』じゃないの(笑)」

著者は、死への恐怖を鎮める最強の処方箋であるはずの宗教が、既にその力を失ったと考察しています。
その代わりに必要なのは「教養」だというのが、このタイトルに込められたメッセージ。
わたしは還暦を過ぎたら宗教に帰依でもして、先人の知恵を借りて死の準備をしようなんて考えていましたが、どうやら甘いらしい。著者は還暦を過ぎて、これまでどんな本を読み、どんなことを考えたか、エッセイ風に語ってくれています。

■ ミニ書評集としての価値
教養とはご存知のように知識と洞察のごった煮で、一人ひとりが自分で作り上げていくものです。新書一冊読んでどうにかなるというものではない、ですよね。

その意味で、この本がミニ書評集のような仕掛けになっているのはとても理にかなっていると思いました。180ページ足らずの本文に、40を超える書評が埋め込まれています。ですから資料的な価値もある。そして読みやすい。お得な新書です。メンタルヘルスを鍛えるという意味でこのカテゴリ。