カテゴリー
資料

自省録

  • タイトル:自省録 (岩波文庫)
  • 著者:マルクスアウレーリウス(著)、美恵子, 神谷(翻訳)
  • 出版社:岩波書店
  • 出版日:2007-02-16

ミニレビュー

たしか『「決定的瞬間」の思考法―キャリアとリーダーシップを磨くために』で言及されていたので読む気になったのだと思います。経緯はともかく、面白い本でした。

皇帝にして哲学者の私的な日記

著者のマルクス アウレーリウスは紀元前2世紀あたりのローマ皇帝。彼が宮殿で、戦場で、長きにわたってしたためた思想の断片集です。ローマ皇帝版プライベート・ライティングという感じかな。

ローマ帝国を治めつつ戦地でこれだけ内省的な文章を書き続けていたことにも、その言葉の多くが現代の我々にも強く訴えてくることにも、驚かされました(意味がよく分からない箇所も多々ありましたが…)。

『遠からず君はあらゆるものを忘れ、遠からずあらゆるものは君を忘れてしまうだろう』と書いたその人の文章が二千年以上も生き続けている。なかなか素敵な話ではないですか。

断片集なので、内容を紹介するのはやはり引用によるのがよいでしょう。あまりにも真っ直ぐな内容で、引用するのが気恥ずかしいものもありますが、
『あたかも君がすでに死んだ人間であるかのように、現在の瞬間が君の生涯の終局であるかのように、自然に従って余生をすごさなくてはならない。』
というような、いのちの短さ(そして長短には意味がないこと)、「いま」にフォーカスすることを繰り返し書いているのが印象的でした。

しかし一番気に入ったのは、そのテーマではなく、この言葉。
『処世術は舞踊よりも角力に似ている。なぜならそれは攻撃、しかも全く予期せぬような攻撃にたいしても用意して、びくともせずにかまえていなくてはならないからである。』(7-61)

ちなみに英語訳はネットで公開されているものがあります。
“The Meditations”