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コンセプトノート

033. 600万円失っても惜しくない

先日知人からこんな話を聞きました。彼のアメリカ人の友人(Alanとしておきましょう)が、ちょうどネットバブルの時期にシリコンバレーで働いていたときの思い出話ということでした。

AlanのいたITコンサルティング企業はベンチャー企業からの引き抜きが激しく、同僚・上司・部下が毎月のようにオフィスを去っていってしまいます。当然彼にも良さそうなオファーが雨あられと降って来るわけです。

彼は今の仕事が好きだったのでそういうオファーは全部断ったのですが、大きなチャンスを逃しているのではないかという気がしてしょうがないという気持ちも当然ありました。

彼がどうしたかというと、今の仕事を続ける代わり、7万ドルくらい投じて「転職してもいいかな」と思ったベンチャー企業の株を片っ端から買ったのです。

その後の株価の推移はご存知の通りで、彼がその時期買った株は今2万ドルくらいに値下がりしてしまったそうです。しかし彼は今も同じ企業に留まり、かなり昇進もしています。

Alanがその5万ドルの損について「考えてみれば、あれは正気を保つために必要な投資だった。だから後悔していない」と言っていたというのを聞いて、うーむと唸らされました。

ただの強がりかもしれません。しかしそうやって自分の過去の選択を正当化・合理化しておく能力は大事だと思います。「自分ナビ」ではチャレンジに対する「期待」と「覚悟」を洗い出すようなことをしますが、そういう作業はチャレンジに取り組んでいる最中も、またやってみた結果を振り返るときも、いつも必要なことなんだと思います。

チャンスを求めて転職することと企業に残ること、どちらが正解という問題ではありません。例えばこのAlanがベンチャーに移った挙句いまは失業状態だったとしても、ベンチャー経営の何たるかを学んだとか、こんな人脈が得られたとか、自分の意志決定をあっという間に正当化・合理化して、心の整理を済ませてしまい、前向きに職探しをするんじゃないかという気がします。

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