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コンセプトノート

488. 起承転閃(雑談による問題解決)

●雑談は起承転々

創業してすぐ、起-動線ランチというオープンランチ企画を始めました。世話人が東京に行く日に時間が合えばランチでも、というだけの企画です。

それから11年。名称はどうあれ相変わらず雑談の機会は多く、今週は4回も朝カフェあるいはランチというかたちで雑談の機会をいただきました。

起承転結の「結」をねらったような雑談は往々にして話がふくらまず、起承転落となってしまいます。起承転々と、ふくらんだはなしが転がっていくのが雑談の面白いところでしょう。

なかには、起承転々……閃(ひらめいた)!という感じで、自分の懸案に対するヒントがもらえる雑談があります。その場で「閃」とはならなくても、あとから「やっぱりこちらでいこう」と心が定まるようなきっかけとなる雑談もあります。

●起承転閃

雑談から生まれる閃きや納得は、緊急度の高い問題の解決にはあまりつながらないかもしれません。しかし緊急ではないが重要な問題の多くは、そういった雑談を通じて解決の糸口をつかんできたと思っています。

いまでは雑談型問題解決とでもいうべき方法論を信奉し、自社にCZO(Chief Zatsudan Officer)という役職を設けるにいたりました。

方法論と書いた以上いずれまとめてみたいのですが、今回は思いつくポイントを列挙してみます。

  • 結論が出ると期待しない
    逆説的ながら、これがもっとも重要なポイント。結論を出そうとすることはおろか、結論が自然に出ることすら、期待しない方がよいように思います。収束させていって結論が出るなら、普通に会議をすればいいわけですからね。
     
  • 問題は共有する
    雑談は、中央分離帯で分かたれた道路のように、お互いの話がただ行き来するだけではありません。話を承(う)けた人が「……といえば」という連想をすることで転がり出します。
    であるならば、問題を提起する側は、考えたい問題の周辺を適切に転がってくれるように、問題を具体的に話したほうがよいと思います。問題には、こうあるべきだというイメージと、いま現場で起きていることの両方が含まれます。
     
  • 話が循環するに任せる
    思考や話題のどうどう巡りは、問題解決をするうえでは避けるべきことです。でも雑談では誰も気にしません。「そのことはさっき聞いた」などと言われたら、雑談を続けられる雰囲気ではなくなってしまいますからね。むしろ、何を話してもよい雑談のなかで、何回か戻ってきてしまう話題があったということは、そこに何か重要な要素があると解釈できます。
     
  • 問題はたくさん抱えておく
    通常の問題解決では、解決したい問題を絞ります。雑談型問題解決では、何と何が結びつくかわかりませんので、「起」として提示する問題は具体的に語るものの、その解決だけにはこだわりません。
    実際、「A社の案件をどう進めるか考えあぐねているので相談させて」といって始まった雑談が、いつのまにか「A社のような(価値を提供できそうにない)案件を取ってしまう理由」「自分のサービスに対する自信のなさ」「今後進むべき方向」といった話に転がっていくことがあります。どれも、A社の案件をどうするかという目の前の問題に比べたら緊急度は低いものの、同じような問題を再生産しないためには重要度の高い問題です。A社という具体的な問題からは逸脱したように感じられますが、A社という具体的な問題から話しはじめたからこそ到達できた、深い気づきが得られるかもしれません。
     
  • 相手を選ぶ
    ここには黄金則はありませんが、雑談による問題解決がきわめて相手を選ぶものであることは間違いないでしょう。たとえば、すぐ話にケリを付けたがるXさんは、わたしの起承転々……プロセスのパートナーとしては難しそうです。でも、たとえば優柔不断気味のYさんは、ばっさりとケリをつけたがるXさんに合いの手を入れてもらうことで、「でも……」といいながら考えをうまく転がせるかもしれません。XさんがそんなYさんにイライラせずにすむかどうかは、相性というものです。
    誰しも相性のよい人とそうでない人がいます。そもそも、がまんして雑談をする人はあまりいないでしょうから、話し相手として思いつく友人・知人がいるとしたら、相性という点ではすでにそれなりにフィルターされているのではないでしょうか。実際に話を聞いてみると、少なくない人が「ふだんは会わないけれど節目には相談したくなる人」を持っているように思います。