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ストーリーテリング入門―お話を学ぶ・語る・伝える


ミニレビュー

図書館や学校などで開かれているお話し会・読み聞かせ会。その語り手に向けた入門書。入門書とはいえ内容はかなり充実しています。

ビジネスにおけるストーリーテリングの研究として、また子どもに本を読み聞かせている親として、本書を読みました。

ビジネスにおけるストーリーテリングでは、例えば提案をどのように物語化するかといったテクニックが中心です。本家(?)のストーリーテリングの入門書であるこの本では、純粋に語り好き(プラス典型的な聞き手である子ども好き)の方のための本。例えば以下の部分にグッと来る方であれば、手にしてみる価値はあるのではないかと思います。

引用:

 

 ストーリーテリングは、口頭伝承です。印刷物は、ギリシャ神話に登場する、ミダスと同じで、お話を黄金に変えたとはいっても、永遠に生命力の感じられないものへと凍結したにすぎません。お話は、幾世代を超えて、形を変えながら口から口へと流れ伝わるうちに、一つの決まった形へと閉じ込められてしまいます。そのお話を解放し、再び流れを作ってあげることを、あなたは任されているのですよ。(第九章「お話を探す」p99)

子どもは、自分で何回も読んだ本であっても、語ってもらうことを好みます。
大人でもそうですね。本の著者が、本とほぼ同じ内容を講演で語る。しかし内容は同じでも得るものは違います。ここは、プレゼンテーションや講演の際によく考えるべきところだと感じました。以下はストーリーテリングがきわめてインタラクティビティの高い活動(遊び)であることを語っているくだりです。

引用:

 

 私は、自分のストーリーテリングはグループ遊びだと考えています。聞き手と、語り手である私が一体となって、お話という名のダンスをするのです。ダンスのステップを知っているのは私だけですが、グループの向かう方向性やスピード、意気込みは、聞き手の反応によって変わってきます。こういったアプローチ方法だと、リラックスした状態で、楽しみながら「お話遊び」にすんなり入ることができます。そのとき私は、グループの前でお話を演じているのではなくて、皆とお話を分かち合っているのです。(第五章「お話と遊ぶ」p56)」

著者は民俗学博士にして司書。訳者の注釈や参考文献も充実し、入門書にふさわしい体裁になっています。また本の後半には12の「お話」が、実践ヒントつきで載っています。まずは子どもにひとつお話を披露してみて、ストーリーテラーぶりを測ってみようと思います。

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