- タイトル:自滅する企業 エクセレント・カンパニーを蝕む7つの習慣病 (ウォートン経営戦略シリーズ)
- 著者:ジャグディシュ・N・シース(著)、スカイライト コンサルティング(翻訳)
- 出版社:英治出版
- 出版日:2008-04-22
ミニレビュー
企業は、「自滅」する
なぜ、優良企業であっても長期にわたって成功し続けられないのか。著者はその原因を「自滅的習慣」に求めます。
何が問題なのか。本書によれば、優良企業の多くが破綻した理由は、競合との熾烈な競争などではなかった。驚くべきことに、原因は「優良企業」自身の体内に潜伏していたのだ。それも、成功をたぐり寄せる過程で自然と身についてしまった「自滅的習慣」によって。つまり、成功が失敗を生んだわけである。(「日本語版 訳者まえがき」より)
そして7つの「自滅的習慣」を特定しています。
- 現実否認症――神話、定石、正統という呪縛
- 傲慢症――おごれる者は久しからず
- 慢心症――成功は失敗のもと
- コア・コンピタンス依存症――諸刃の剣
- 競合近視眼症――忍び寄る伏兵
- 拡大強迫観念症――右肩上がりの幻想
- テリトリー欲求症――コップの中の縄張り争い
優良企業が陥る、7つの自滅的習慣 – *ListFreak
これまでの企業研究の多くは、成功した企業の成功要因を分析したものでした。この「自滅」の研究は、それらの成果を否定するものではありません。著者は『エクセレント・カンパニー』や『ビジョナリー・カンパニー』の功績を認めた上で、以下のように研究の視点を定めています。
彼らは十分に納得のいく理由で、特定の企業を成功モデルとして選び出した――その企業が後に、まったく別の理由で凋落したのだ。私の目的は、かつての成功企業がそもそも「エクセレント」あるいは「ビジョナリー」と選定された理由を見直すことではない。私が知りたいのは、その後、企業に何が起こったかである。(p25)
7枚の「診断書」
第2章以下では、1つの自滅的習慣について1章を割き、それが何であるか、なぜ起きるか、どうしたら避けられるかを考察しています。そして各章の最後には、「発症のきっかけ」「主な症状」「治療法」を見開きにまとめた「診断書」が付いています。
本書の研究対象は優良かつ大きな企業です。「慢心症」などはそういった企業にとりわけ見られやすい習慣でしょう。しかし、「現実否認症」などは、組織で働いた経験の持ち主ならば誰でも、思わず「あるある!」と頷いてしまうと思います。そういう意味では、大きな優良企業にお勤めの方はもちろん、これから成功しようとがんばっている企業の方々にも、予防薬としてお勧めできます。
実際、最終章のタイトルは「予防は治療にまさる」です。個人の生活習慣病の最善の対策は、治療でなく予防。同様に、企業の「自滅的習慣」も予防すべきとして、それぞれの病気ごとに予防策を提案しています(残念ながらこの部分は薄めで、今後の研究の進展に期待というところです)。
社会人としての視点でも
企業は悪習慣によって自滅するというテーマは、個人にも援用できます。自分のスキルについての「現実否認症」や、過去の成功による「傲慢症」などなど、一個人としてどう振る舞っていくべきかを考えるうえでも有益な本でした。