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なぜ、あなたがリーダーなのか?


ミニレビュー

ロンドン・ビジネススクール教授らによるリーダーシップ研究のまとめ。優れたリーダーに共通する資質を探るのではなく(そんなものはないというのが著者の主張)、各自が自分の持ち味を生かしてリーダーシップを発揮するためにはどうすればよいかを考えています。

で、どうすればよいか。第1章から第7章までが、回答にあたる部分です。

序章 なぜ、あなたがリーダーなのか?
第1章 自分自身に忠実であれ
第2章 自分らしく振る舞え
第3章 リスクに身をゆだねよ
第4章 おかれた状況を感知せよ
第5章 相応に妥協せよ
第6章 距離感を操れ
第7章 組織にリズムを刻め

第8章 部下は何を望むか
第9章 リーダーシップ―その代償と褒賞

なぜ、この7つなのか。それは、著者がリーダーシップを以下のようなものして定義しているから。

「リーダーシップに関わる三つの原理原則」
・リーダーシップは状況に左右される
・リーダーシップは肩書きを問わない
・リーダーシップは関係性に根ざす

「自分自身に忠実であれ」「自分らしく振る舞え」「自分をさらけ出せ(第3章)」とはいえ、深い自己理解は必要ない。『「他人に影響を与えうる」自分らしい「何か」を認識している(p57)』程度で十分である。このあたりが本書における著者の重点的な主張の一つです。

引用:

 

自分の持ち味を活かせるかどうかは、完璧に(あるいは深く)自己を理解しているかどうかには依存しない。むしろ「自分らしさ」は、リーダーとしての役割を担って部下と接していくなかで引き出され、実用に資するよう磨かれていくものだ。そこにおそらく、自己「理解」と自己「認識」の差が存在する。時の流れの中で、彼らのようなリーダーは、何がうまく作用するのかを見出していく。そして、ある自分の持ち味が繰りかえし効果を生み出すなら、それがなぜ、どのように作用するかは必ずしも知らなくてよいのだ。(p37)

全体を通じて納得感の高いリーダーシップ論であり、自分なりのリーダーシップを打ち出すために考える材料を豊富に与えてくれます。

一つだけ難点を挙げるとすれば、自分の主張の価値や独自性を、他のリーダーシップ研究との差別化によって証明しようとし(過ぎ)ているところでしょうか。
たとえば、上述の「リーダーシップに関わる三つの原理原則」を説明しているくだりでは、一つ一つの原則に以下の言葉を一つずつ添えています。
「巷のリーダーシップ論が案外軽視しがちな点だ」「これまでの研究は、組織の長に過度に着目する傾向があったように思う」「この原則は、以前のリーダーシップ研究では無視されていた」

著者は研究者なので、類書との違いを述べ立てたくなる気持ちは分かります。でも、読者としては、役に立つことが第一。