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孫子・呉子


ミニレビュー

『孫子』を読んだことが無かったので解説書を探していたのですが、『孫子』を含む「武経七書」を全訳・解説したシリーズがあるということでこれを読んでみました。

このシリーズでは七書を三巻に分けています。この本は孫子・呉子。
他には下記の本があります。
『司馬法・尉繚子・李衛公問対』
『六韜・三略』

『孫子』13篇をさらに区切り、見出しをつけた上で、1〜3ページずつ

 口語訳 → 著者の解説 → 書き下し文 → 原文

という構成に仕立ててくれているので、とても読みやすくなっています。

現代、軍事関係者以外で『孫子』を手に取る方はだいたいビジネスパーソンで、
(1)『孫子』は史上最高の兵法書である。(2)ビジネスは戦争である。(3)ゆえに『孫子』は経営の役に立つ。
という三段論法的な期待を持っているのではないかと思います。

わたしもまさにそのような期待と、起-動線向けに個人のキャリアを考える上で役に立つかもしれないという期待を持って読みました。

大雑把に言ってしまえば、マクロな戦術論としては汲み取れるものが多いと思いますが、企業経営に活かすという発想にはちょっと無理があるような気もしました。

戦争では自分と敵の二者がいて、自分と敵は正面から相対します。
ビジネスでは自分とライバルと顧客の三者がいて、自分とライバルは共に正面の顧客に顔を向けています。

戦争の目的は敵をやっつけることですが、ビジネスの目的は顧客の支持を勝ち得ることであって、ライバルをやっつけることではありません。たとえば、ネガティブキャンペーンを張って、審判たる顧客を欺いて、結果としてライバルに勝つ戦術は戦争ではOKですが、ビジネスでは許されるのか。など、いろいろ考えてしまいました。