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経営意思決定の原点


ミニレビュー

組織の意思決定に関わる、とてもよいまとめになっています。第一部「経営意思決定の基本要素」では、個人、そして集団で何かを決めるときに陥りがちな罠について簡単に解説してあります。

意思決定の偏りに関するトピックはあちらこちらの文献にあるので、目新しさを感じない読者もあるかもしれません。著者は第二部以降の展開に必要な知見に絞り、分かりやすい日本語で要約してくれています。この部分で著者の高い要約力と筆力を感じました。

第二部では、意思決定がうまくいかない状態を以下の5つの病状に分けて、どのような原因でうまくいかないのかを考察しています。

  • 決められない:優柔不断
  • 決め急ぎ:拙速
  • 決めたはず:決定事項が実行されない
  • 決めっ放し:決めたことの評価・見直しの欠如
  • 決めすぎ:頻繁な変更による資源の浪費

組織の経営意思決定に見られる5つの病状*ListFreak

第三部が処方せんに当たる部です。意思決定をどう上手く行うかよりも、何を意思決定の対象とすべきかを考える「敏感力」、悪い情報をも共有して意思決定のプロセスを持続的に回していくための「コミュニケーション力」、そして決断につきものの様々なトレードオフを乗り越えるための「バランス力」。

第一部が90ページほどあるのに対して、第二部と第三部がそれぞれ60ページに満たない量です。そのため、自説の開陳というよりはまとめ記事に近い印象を受けました。ただ上で述べたようにまとめ方が上手で本として読みやすく仕上がっています。

こういう本はさらに深く勉強するための入り口として有益だと思いますので、願わくは、文中で引用している情報と文献を対応させておいて欲しかったところです(参考文献は一覧という形で巻末にあります)。

コンセプトノート

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