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MBAが会社を滅ぼす マネジャーの正しい育て方


ミニレビュー

ヘンリー・ミンツバーグ氏は、『マネジャーの仕事』や『戦略サファリ』で知られる経営学者。500ページを超える大著の半分を、いわゆるMBA(経営学修士)プログラムの批判に費やし、後半では自ら実践しているマネジメント教育を紹介しています。

前半の内容は、以下の引用部分に集約できるでしょう。

引用:

 従来型のMBAプログラムは、さまざまな業務機能のトレーニングを行う過程であって、総合的なマネジメント教育とは言えない。教室で現役マネジャーの能力向上を助けるというのはいいアイデアだが、マネジメント経験のまったくない人をマネジャーに育てるなどと宣伝するのはペテンに等しい。ビジネススクールは、マネジメントに十分な関心を払っていない。(p16)

BA(Business Administration、経営管理)を学ぶことと、組織のマネジメントを学ぶこととは同じではない。それはその通りだと思います。大雑把に例えれば、官僚と大臣の役割が違うようなものではないでしょうか(奇しくも、『MBAは新しい時代の「官僚」という見出しがあります』。

著者は、以下のような表現もしています。

引用:

大学院レベルのMBA教育には、二つの異なる方向性がある。一つは、MBAの「B(=Business)」の側面、すなわち専門的な業務機能の教育。対象は、主として経験の乏しい若い人たちだ(略)。もう一つは、MBAの「A(=Administration、管理)」の側面、すなわちマネジメントの教育である。現役マネジャーを具体的な文脈に沿って教育するのである。この両者は、まったく異なるアプローチを取る。(p248)

現在のMBAはBに偏っているということですね。それも分かります(AdministrationとManagementは違うと思うのですが、それはおいておきます)。ただ、そういったことを主張する前半がどことなく不機嫌な調子で、付き合うのがちょっと辛い感じです。例えばケースメソッドを批判して、『授業で導き出された結論は、決して実行に移されることがない。なんともご立派な意思決定とマネジメントだ』。ケースメソッド自体の有用性を否定しているわけではないのですが、それでマネジメントが学べるというならば誤解であると、学校と生徒の双方(どちらかといえば学校側)を厳しく批判しています。

少なくとも日本では健全な批判意識のようなものがあって、この本で語られているようなMBA崇拝は無いと思いますが、MBAで何が学べて何が学べないのかを考えるにはよい一冊ではないでしょうか。