カテゴリー
資料

眼の誕生――カンブリア紀大進化の謎を解く


ミニレビュー

『ダーウィン、グールドをも悩ませた爆発的進化』(帯より)、いわゆる「カンブリア紀の爆発」の原因に挑戦した本。「カンブリア紀の爆発」についてはNHKスペシャルか何かで耳にした程度だったので、この本で初めて学びました。

なんとなく「大進化」とだけ理解していたのですが、それでは不正確らしいです。

引用:

カンブリア紀の爆発とは、五億四三〇〇万年前からのわずか五〇〇万年間に、全ての動物門が複雑な外部形態をもつにいたった進化上の大事変である。(p29、太字は引用者による)

わたしの理解をメモしておきます。
上の「動物門」というのは、動物界の最も高次のグループ分けで、38門あります。動物門は、体のしくみ(体制、ボディプラン)によって分類されています。『つまり、これまでに起きた遺伝的な大変革はわずか三八件のみで、その結果、三八の異なる体制が生まれたということである(p27)』。

ここで再度引用部を振り返ると、大進化といっても動物門が増えたのではなく、既にあった動物門の外部形態(見かけ)が多様化した、ということです。

ではなぜ、この時期に動物が突如としてキテレツな形態を模索し始めた(参照:『ワンダフル・ライフ』)のか。ある動物(三葉虫)が「眼」を手に入れたから、というのが著者の仮説です。
(ではなぜこの時期に「眼」を持つに至ったか。確たる証拠はありませんが、著者は先カンブリア時代の末に地球が明るくなった理由について幾つかの仮説を立てています)

一般向けの科学読み物としてとても面白いのですが、内容よりも著者がまだ30歳代と若いことに興味を持ちました。研究者というのは功成り名を遂げて、それから啓蒙書を書くものという先入観があったのですが、著者は、研究成果を挙げつつ、それを世に問うています。

あと面白かったのは、『理論上、眼は五〇万年もあれば進化できるのだ』というようなスケール感覚。素人には想像もできませんが、そういうものなのですね。

(参考)
ワンダフル・ライフ―バージェス頁岩と生物進化の物語

NHKスペシャル 生命 40億年はるかな旅