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複雑さと共に暮らす


ミニレビュー

問うべきは「複雑かシンプルか」ではなく「分かりにくいか分かりやすいか」だ。本書が追いかけている問いを一文にまとめると、こんな感じだと思います。

高度なテクノロジーは必然的に複雑さを伴うもので、複雑さ自体を悪と見なすべきではない。注目し、改善すべきは、テクノロジーと人間とのインターフェースの設計である。問いに対する考察は、こんな感じです。

本の中に旅客機のコックピットの写真があります。多くの計器・ボタン・レバーが並び、とても複雑ですが、それらの配置の論理(どの要素がなぜそこに置かれているかといった理由づけ)を理解しているパイロットにとっては、決して分かりづらくはないそうです。

もっと身近な例も挙げられていました。たとえば電卓。PCから呼び出せるソフトウェアの電卓には25ものボタンがありますが、われわれはそれを苦もなく使いこなし、不平を言うことがないではないかというのです。なるほど。

そしてボタンが少なくシンプルなユーザーインターフェースだから分かりやすいというものでもないですよね。iPhoneやiPadの表面にあるボタンはホームボタン1つだけですが、シングルクリック・ダブルクリック・長押し・超長押しによって別の機能が呼び出されます。最新のOSではトリプルクリックもできるようになりました。さらにホームボタンをスリープ/スリープ解除ボタンと同時に押す、同時に長押しする、それぞれ別の機能があります。複雑さは愉しみにもつながると著者は指摘していて、わたしも(iPhoneに関しては)同意しますが、iPadを買った実家の母にとっては大変なチャレンジです。

著者は身近な事例を大量に挙げながら、複雑性に対処するための原則を、デザイナーと利用者双方の観点から導いていきます。

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