ミニレビュー
原因と結果の法則とは
この本を象徴するキーワードであり、本書のタイトルにもなっている「原因と結果(cause and effect)」の核となる考え方をよく表している一文を探してみました。
外側の世界である環境は、心という内側の世界に合わせて形づくられます。
「原因」というのは「心という内側の世界」であり、「結果」は「環境という外側の世界」です。とりわけ重要なのが、原因(内)が結果(外)をもたらすという順序に非常に厳格である点です。
一般的には、原因と結果は循環的な関係になることが多いですよね。たとえば、
無理解な上司のせいで評価が低い
→どうせ評価されないと思うと仕事もやる気が出ない
→全力を尽くさないので成果が出ない
→低い評価を受ける
という悪循環があったとしましょう。「評価が低い」という事実は結果でもあり、仕事のやる気を下げる原因でもありますが、ジェームズ・アレンのこの本では断固として「結果」であり、その結果は「心という内側の世界」からもたらされたものです。
「バカ上司にめぐり合ったのはオレの心のせいじゃないよ 」
と言いたいところですが、ジェームズ・アレンはそのような甘えは許しません。
『私たちは、自分が望んでいるものではなく、自分と同種のものを引き寄せます。』
「じゃあ天災に遭ってもオレの心が引き寄せたって言うのかよ! 」
それはたぶん違うでしょう。でもそうすると、
「なんだ、環境のせいにできる部分もあるってことじゃない 」
「バカ上司の下に配属になったのだって、『天災』だよね 」
「やっぱりオレって不幸… 」
と、自分に甘えを許す余地が拡大していきそうです。
著者がここまで厳格にすべての原因を「内」に求めている理由は、無理解な上司と仕事をしなければならない状態を「天災」としか考えられない人に「本当にそうなのか?」と問い直させるところにあると思います。
「天災」すなわち環境のせいとしか思えないことに遭ったときに
「自分のせいでは全く無いと思うけれど、仮に自分に原因があるとすると、それは何だろう?」
という形で自問していけば、自分から環境に働きかけるきっかけをつかめるかも知れません。
厳しい考え方ですね。うつの時には必要以上に自分を責める気持ちが高まるといいますから、そういうときに読むには向かない本かもしれません。
しかしわたしも(たぶん多くの人も )環境(外側の世界)に原因を求めやすい傾向を強く持っているもの。この「内→外の法則」は、行き詰ったときのチェックリストとして有効ではないでしょうか。
#全文がネットで公開されています。原題”as a man thinketh”で探してみてください。