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これから何が起こるのか


ミニレビュー

帯には、「ウェブ2.0革命が、資本主義のすべてを変えていく。」とあります。
一見、「そんな大げさな!」と思われるかもしれません。しかし、著者は田坂 広志さん。大衆受けを狙って言葉遊びをされる方ではありません。

この本では、1995年に始まったインターネットの商用化から歴史の流れを追っていくことで、革命すなわち「権力の移行」がどのように起きているかを解説しています。情報主権の移行は市場の革命をもたらす。市場の革命は企業・ビジネス・商品・マネジメントに変化をもたらし、ひいては資本主義、そして経済原理に変化をもたらします。その流れを、順に解説しています。

IT業界の方であれば多かれ少なかれ親しんでいるテーマだと思いますが、やはり田坂さんによる解釈は、なにか手触りが違います。たとえば『「ウェブ2.0革命」は「衆知創発」の革命をもたらす』(第5の変化)という言葉。オープンソースとかバザール開発とかコモンズとか、カタカナ言葉を寄せ集めて理解していたムーブメント(じゃなかった、動き)に、初めてしっくりくる日本語が当てられたような気がします。

これだけですと、過去の動きを敷衍して将来を予測しているだけの本だと思われるかもしれません。あたかも台風の進路予測のように。しかし、この本のメッセージはそれだけに留まりません。75の「変化」の、その最後は以下のようにしめくくられています。

『資本主義の進化は日本型資本主義へ回帰していく』(第74の変化)
『そして「日本の時代が始まる」』(第75の変化)

ただし、大きな前提があります。田坂さんが根拠として挙げておられる、日本人の労働観や利益観。昔から息づいているこれらの価値観を我々が保ち続ける限りにおいて、「日本の時代が始まる」というシナリオは成立します。

この本を読んで共感すればするほど、「今のままではまずい」と、感じざるを得なくなる方は多いと思います。つまりこの本は、単なる台風の進路予測(フォーキャスト)ではなく、望ましい姿を先に描く「バックキャスト」型の未来予測なのです。

幸い、何かをゼロから創り上げなければならないという話ではありません。我々が根っこのところで持っている価値観を維持し、次世代につないでいけばいいのです。