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ポジティブな人だけがうまくいく3:1の法則


ミニレビュー

「バーバラ・フレドリクソン」という名にピンと来るものがありました。「学習性無力感」の研究で知られ、そしてポジティブ心理学の開拓者としてより有名になった、マーティン・セリグマン教授の著書で名前を見かけたことを思い出したのです。

引用:

 

 ポジティブな感情が、ただ楽しいと感じることをはるかに超えた、もっと奥深い目的をもつことを私に教えてくれたのは、ミシガン大学助教授のバーバラ・フレデリクソンだった。最初に彼女の論文に目を通したとき、私は一気に階段を駆け上がり、興奮して妻のマンディに言った。
「人生を変えるものにめぐり会ったよ!」
世界でひとつだけの幸せ―ポジティブ心理学が教えてくれる満ち足りた人生

フレドリクソン教授の仕事を、引き続きセリグマン教授の本から引用します(この本では「フレデリクソン」と表記されています)。

引用:

 

 フレデリクソンの説は、ポジティブな感情は、進化における遠大な目的をもっているというものだった。ポジティブな感情は、人びとの知性を磨き、身体能力を培い、危機に直面したときには勇気をふるい起こさせる。ポジティブな気分でいるときには、 いつも以上に他者をいとおしみ、友情や愛情やお互いの絆もさらに強固になる。そして、新しい考えや教えを受けいれる柔軟性がもてる。
 彼女は、シンプルだが説得力のある実例を示して、この画期的な理論を立証した。

いったいどんな実験を行ったのか、気になりますよね。セリグマン教授の本にも簡単に紹介があるのですが、本人による著書の(たぶん)初めての和訳ということで、興味を持って読みました。

第一の収穫は、氏の「拡張-形成理論」についての理解が深められること。恐怖や嫌悪といったネガティブな感情がどのように生まれたかは、ざっくり言えば「生き延びるため」という文脈の中で比較的説明しやすいのですが、ポジティブな感情の方はそうではありませんでした。「拡張-形成理論」はポジティブな感情の果たす役割についての理論です。内容については省略しますが、個人的に興味があったので、著者自身による要約はありがたかった。

第二の収穫は、ポジティブな感情の高揚について様々な実験がまとめられていること。本書には、新しい分野の貴重な総説という側面があります。
ただし、和訳では引用文献が無惨にもばっさり削除され、いわゆるトンデモ本との区別がつきません。監修者は『総じて、本書はエビデンス(学術的根拠)にどこまでもこだわった「科学的ポジティブ追究本」であり、学問として信用に足りる』と書いてくれているのですが、そこまで書くならば断固として引用文献を載せて欲しかった!と思います。

タイトルの「3:1」も、実際の研究結果に基づいています。ネガティビティゼロの脳天気人間が我々の理想ではないことは、予測がつきます。本書ではさらに踏み込んで、ポジティビティとネガティビティの好ましいバランスをユニークな実験から定量的に示しています。第一人者の面目躍如ですね。

ちなみに、この本の編集者は拙著『クリエイティブ・チョイス』の編集を手がけてくださった川上 聡さん。この本をチョイスしてくださったことに感謝!

(参考)
10のポジティブ感情 – *ListFreak

コンセプトノート

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