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「紫の牛」を売れ!

  • タイトル:「紫の牛」を売れ!
  • 著者:セス・ゴーディン(著)、門田 美鈴(翻訳)
  • 出版社:ダイヤモンド社
  • 出版日:2004-02-20

ミニレビュー

起-動線ジャントー・クラブ2004年4月の「今月の一冊」

マーケティングの本ですが、個人のキャリアを考える上でも注目されている本です。

■紫の牛とは
マーケティングの4P(あるいは5P)というのを聞いたことがあると思います。マーケティングを考える上で欠かせないProduct、Promotion、Pricing、Place …などなどの要素のことです。この”P”のリストはどんどん長くなってきているので、最近は好きな5つを選んで使っていいことになっているみたいです。

1999年にPermissionという”P”を追加したSeth Godinが加えようとしている更なる”P”が”Purple Cow”、すなわち「紫の牛」です。

■存在をして語らしめよ
この本のメッセージを一言でいえば、「存在をして語らしめよ」と要約できるでしょう。

マス広告の効果が薄れてきているそうです。バナー広告の値段は99%下落し、「伝統的な」マスマーケティング戦略で成功した企業は6%しかない。

ではどうすればいいか。

「広告宣伝によって売り物を語るのではなく、売り物自身に語らせる」
というのがこの本の提案(”Being Remarkable”、あるいは”Purple Cow”)です。
ごくごく簡単にまとめると:
・マスマーケティングに使っていた費用は製品開発に回し、
・製品自身にメッセージを持たせることによって、
・オタクを引きつけろ!
ということです。

■個人のキャリアを考える:あなたの「紫の牛」は?
上記の話を、

 満足した消費者 = 求人しない企業
 溢れる「よい」製品/サービス = 溢れる「よい」求職者

と置き換えてみたらどうでしょうか。雇用が海外に流出しているアメリカ(特にIT業界)が現在まさにこのような状況なので、この本をキャリアの本として捉えている記事/blogも見かけます。

ふつうに「よい」とされる条件、つまり高い学歴や大手企業での職歴などでは雇用市場で目立てないとしたら、”Remarkable”―常識破りと訳されています― であるためには何をしたらよいのか。そんなことを考えさせてくれる本でもあります。

■目立つという恐怖
「目立つ存在になれ」というメッセージはとてもシンプルなので、当たり前に思うかもしれません。わたしも読み進めながら、「まあ、お説ごもっともではあるけれど…」という気持ちがなくもありませんでした。

「紫の牛」を目指すことを難しくしている心理的な要因についても書かれていますのでちょっと引用しておきます。

引用:

 

「紫の牛」になれば簡単に効果的に混乱状態を脱することができるならば、なぜみんながそうしないのか?なぜ「紫の牛」になることはそんなに難しいのか?
(略)
「紫の牛」がこれほど少ないのは、人々が不安をいだいているからである。
 もしもあなたが常識破りな存在になれば、あなたに好意を持たない人も出てくるだろう。非凡ということには、そういう面もある。万人に賞賛される人などいない。臆病な人は、何よりも目立たないでいたいと思うものだ。

もちろん、万人が「紫の牛」を目指すべきとも思いませんが、仮にあなたがRemarkableでありたいと思ったとして、この目立つという恐怖を克服したいと考えているならば、例えば次の箇所なんかは大いに参考になるのでは。

引用:

 

 私たちはしばしば批判を嫌って隠れ、否定的な意見を聞こうとせず、そのため(皮肉にも)確実に成功できなくなっているのだ!もし道を切り開いて進むには非凡になるしかなく、批判を避けるには凡庸で安全でいるしかないならば、それこそが考えどころではないだろうか?
 あなたとあなたの仕事とは別ものである。仕事への批判は、あなたの批判ではない。それに気づく必要があるということ自体、私たちがいかに「紫の牛」の時代に向けた準備ができていないかということだ。最終的に敗れ去るのは、批判されることのない仕事をしている人々である。

※Seth Godin氏のコラムには元気の出るものが多いです。過去に幾つかコンセプトノートの材料として取り上げました。
> コンセプトノート『10年後の自分からの質問:「この10年、何してた?」』
> コンセプトノート「ほんとうのハードワーク」

※参考
In Praise of the Purple Cow(著者自身による長〜い紹介)
2003 Marketing Books of the Year Awards

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