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イノベーションの達人!―発想する会社をつくる10の人材


ミニレビュー

『発想する会社!』を書いた、デザインファームIDEOのトム・ケリー氏による2作目。今回は人材論です。

イノベーションを産み出せる組織の文化を、どう定義し表現するか。
これ自体がとても難しいことです。
しかし、そこはさすが経験デザイナーIDEO社。
10の「顔」(キャラクター)で表現するという発想を得ました。

組織図も、記号や矢印の飛び交う図も、本書には1つもありません。その代わりに豊富なストーリーがあり、箇条書きにまとめられた知恵があり、美しい写真があります。

10の「顔」という直感的で分かりやすい表現と、イノベーションの文化を体現している組織の最高のケーススタディであるIDEOの事例。この2つが本書の納得度を高めています。

さて、その10の「顔」ぶれは下記の通り。読み進めていけば
「たしかに、あの人がこの『顔』で参加していたから成功できた」
「たしかに、あの失敗プロジェクトにはこの『顔』がなかった」
という実感を持たれると思います。

引用:

情報収集をするキャラクター
 人類学者:観察する人
 実験者:プロトタイプを作成し改善点を見つける人
 花粉の運び手:異なる分野の要素を導入する人

土台をつくるキャラクター
 ハードル選手:障害物を乗り越える人
 コラボレーター:横断的な解決法を生み出す人
 監督:人材を集め、調整する人

実現するキャラクター
 経験デザイナー:説得力のある顧客体験を提供する人
 舞台装置家:最高の環境を整える人
 介護人:理想的なサービスを提供する人
 語り部:ブランドを培う人

本書の核だと感じた部分を抜き書きしておきます。ダイエットの比喩が素晴らしい。

引用:

 イノベーションはただのプログラムではない。それは一つの生き方である。究極の健康プログラムが一時的なダイエットではなく、健全なライフスタイルであるのと同じことだ。(略)優れた会社では、イノベーションの精神が事業全体に浸透している。社内のイノベーションのキャラクターをいつも良好なコンディションに保たせよう。そして、チームにも同じことを奨励しよう。(p291)