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いま20代女性はなぜ40代男性に惹かれるのか


ミニレビュー

●異世代恋愛の分析から見えてくる、社会の歪み

引用:

 

 いま二〇代女性はなぜ四〇代男性に惹かれるのか――。
 本書が、現代人の抱える心の問題や、その先にある幸せのありさまなどを考えていただくきっかけになれば幸いです。(「はじめに」より)

 著者は電通総研のスーパーバイザー。専門は健康市場のリサーチです。ここでいう「健康」には心身両面が含まれます。ですから市場の将来を考えるためには、食事・運動・ストレスなどさまざまな方面からのリサーチが必要になります。その過程で「現代人の抱える心の問題」や、そういった問題を生み出す社会的な構造も著者には見えていることでしょう。

 そんな著者が本書でスポットライトを当てたのは、心の健康に影響を及ぼす「恋愛」。タイトルに書いてあるように、20代女性と40代男性の恋愛が増えている現象を分析の切り口として選んでいます。

 当事者の視点からは、好きになった相手がたまたま異世代だったということにすぎません。しかし特定の組み合わせが統計的に有意なほど高いとすれば、そこには何か構造的な理由があるはず。

 1万人を対象としたウェルネス調査の結果を「年代」と「性別」でざっくり区切って見ていくと、それぞれのセグメントの特徴が見えてきます。
 著者は、それらの特徴と時代的な要素(たとえば、いま20代後半の女性は「女子高生・コギャル」ブームの主人公世代だった)をかけ合わせながら、20代女性と40代男性が惹かれ合うにいたる背景を推察しています。

 たとえば「壁期」の存在。20代女性も40代男性も、理由は違えど人生の「壁」にぶち当たってストレスを感じがちな年代です。両者の恋愛はお互いのストレスをうまく解消しあう形になっているというのが、著者の発見でした。
 それに加えて、普通に考えれば20代女性の恋愛対象になるべき20代男性がそうなれない理由などを分析し、その発見を補強しています。
 調査を分析しながら社会の歪みを探り当てていく様子は、なんとなくカイロプラクティックの先生が触診で骨の歪みを探り当てる様子を連想させました。

 同じ切り口で経年変化を追ったデータがあるわけではありませんし、あったとしても因果関係を明らかにするのは難しいテーマです。著者は調査結果に加えて豊富な事例、そして個人としての肌感覚を加えて、納得性の高いストーリーを紡いでいます。

 それにしても、恋愛観がかくも変わってきているとは。『かれこれ一〇年以上前に、だれしもが使っていたであろう、恋愛における「ABC」の三つのステップは、いまや「H」という一言に集約されてしまい、むしろそこから恋愛がはじまる』なんていうくだりにはびっくりさせられました。著者はABCに代わる現代の恋愛のステップを、他の著者の著作から引用しています。面白かったので孫引きしましょう。

  • H(セックス)してから、
  • I(愛)が生まれて、
  • J(ジュニア=子ども)ができて、
  • K(結婚)する

HIJK−現代の恋愛パターン*ListFreak

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