- タイトル:モモ―時間どろぼうとぬすまれた時間を人間にかえしてくれた女の子のふしぎな物語 (岩波少年少女の本 37)
- 著者:ミヒャエル・エンデ(著)、ミヒャエル・エンデ(イラスト)、Michael Ende(原著)、大島 かおり(翻訳)
- 出版社:岩波書店
- 出版日:1976-09-24
ミニレビュー
■時間どろぼうは誰?
時間どろぼうの画策によって、今まで生活を楽しんでいた人々が、お金や名声を得るために「降りるに降りられない」ような状況になってしまいます。
さて、時間どろぼうは誰なのでしょうか。
見栄とか競争心なのかもしれません。『エンデの遺言』を読むと、資本主義(とりわけ、今日の100円は明日の100円より価値があるというアイディア)も容疑者のようです。個人によっても違うのかもしれませんが、こういったことを考えさせてくれるストーリーになっています。
■究極のタイム・マネジメントブック?
時間管理術やタイム・マネジメントを習う前に、そもそも「何が自分にとって本当に大事なのか」を考えることが必要ですよね。そうでないものを一生懸命管理しても意味がありませんから。
例えば『勝者の代償―ニューエコノミーの深淵と未来』という本は、米クリントン政権の労働長官だったロバート・B. ライシュが、彼なりに時間どろぼうから時間を取り戻した物語として読むことができます。彼のタイム・マネジメントは労働長官としての仕事の生産性を倍にすることではなくて、その職を辞することで『干しぶどうのようにしなびてしまっていた』生活を取り戻すことでした。彼の価値観に沿った時間配分を可能にするためにした決断ですから、これは日レベル・週レベルの話ではなく、人生レベルのタイムマネジメントといえるでしょう。
■モモは最強のコーチ?
モモはとにかく聞き上手で、相手は話しているうちに自分の抱えている問題を自分で見つけてしまいますし、話し手のイマジネーションをどんどん促進してしまいます。自己発見を促す問いを発するわけではないのでコーチとは言い難いかもしれませんが、浮浪児が実は無類の聞き上手という設定が面白いと思いました。
原作が出版されてからちょうど30年。「スローライフ」「ワークライフバランス」などは、まさに時間どろぼうから時間を取り返そうとするムーブメントのようでもあります。
自分が時間どろぼうに時間を盗まれていないか。盗まれているとすればそれは誰なのか。それを考える最初のチャレンジは、この本を読む時間を捻出できるかどうか、かもしれません