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吉田松陰

ふと図書館で見かけて借りて読みました。
著名な人物ですが、松下村塾を主催して、高杉晋作ら明治維新の立役者を教育したということ以外、僕はその人となりをほとんど知りませんでした。

今回これを読んでつくづく感心したのは、吉田松陰の利用できたリソースの小ささと、成し遂げた事業の大きさととのとてつもないギャップです。

地方の藩の下級武士の子として生まれ、藩主に講義を行って認められる機会があったとはいえ、金も政治的影響力もない一介の私塾の講師に過ぎず、しかも24歳の時にアメリカへの密航に失敗してからはずっと牢獄や自宅謹慎で過ごし、30歳で刑死してしまうという状況で、明治維新につながる思想的に巨大な影響を与え、歴史に名を残したというのは、脅威の一言です。

作者の童門冬二は、これをなしとげた要因を吉田松陰の志の高さに求めています。長州の松本村にありながら、本気で日本を変えようと考え、人材育成に精魂傾けた結果がこれだった、ということです。

変革のために要人暗殺という手法を用いようとしたところは批判されざるを得ないでしょうが、それも、若さと本人の置かれた立場のあまりの弱さ、それと対照的に、当時日本の置かれていた状況に対する危機意識の強さゆえのことと考えると、同情の余地もありそうです。

ともあれ、何も持っていなくても、「志」一つでここまでのことが成し遂げられ得るのだ、と知ることは、生きる上での巨大な励みになります。