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コンセプトノート

195. “A sense of urgency”(急がなきゃ!感覚)

“A sense of urgency”(急がなきゃ!感覚)が仕事を楽しくする

駅から徒歩20分と遠い場所で打ち合わせがありました。駅からの道すがら5分くらいのところで、もう2年越しで停滞していた別の仕事を前に進めるアイデアが、突然浮かびました。
誰しも経験があると思いますが、本当に爽快な気分ですよね。打ち合わせの後は早く仕事場に戻りたくて、自然と小走りになってしまいました。

わたしはこういう気持ちを、”A sense of urgency”(急がなきゃ!感覚)と呼んで、非常に大事にしています。このモードに入れれば、個人でもチームでも、楽しくかつ高い生産性で仕事ができることを、過去の経験から学んだからです。

小走りした翌日は、ソーシャルベンチャー向けのビジネスプランコンテスト「スタイル」で、一次審査通過者の方とお話しする機会を得ました。これからプランを詰めていく彼らの背中を押す「ブラッシュアップメンター」という役どころです。

Iさんはその中のお一人。プランの社会性もご自身のパーソナリティも素晴らしく、ぜひ応援したいと思う方でした。しかしIさんはまだ大学生であり、卒業までに数年の時間があります。なぜ急ぐのか、なぜ今年なのかという質問への答えが、まさに”A sense of urgency”を感じさせるものでした。

この瞬間にも、不安や不満を感じている人たちがいる。
だからこのサービスを、早く未来の顧客に届けたい。

その思いから、在学中の起業を考えるようになったという答えでした。
有望な事業ドメインでは、競争の激化も予想されます。急ぎたいという理由がそのような競争戦略上の選択だとしたら、Iさんの言葉も聞き手の共感を呼ぶことはなかったと思います。

良い「急がなきゃ!」とそうでない「急がなきゃ!」

競争しているのであれば、急ぐことは必要です。しかし、良い「急がなきゃ!感覚」とそうでない「急がなきゃ!感覚」があるのではないでしょうか。
前者は例えば「競争相手よりも良いものを早く顧客に届けるため」の競争です。急ぐ動機が内発的であり、顧客志向です。それが顧客のためならば、競争の中に協調を持ち込むこともできるでしょう。
後者は例えば「競争相手に勝つため」の競争です。動機は外発的(急がされている)であり、顧客に不利益や不便を強いても、競争相手よりも優位に立つ(例えば高いシェアを取る)ことを優先しがちです。

“A sense of urgency”という成句があるのかどうか、ネットを検索していて、たまたま後者の例かなと感じられる文章に出会いました。

イノベーションを生み出すためにはマイペースに陥ることなく、常に競争相手との将来を見据えた、ベンチマークを行っていくことが重要です。そのためには危機意識(Sense of Urgency)を持たねばなりません。なぜなら、これは、グローバルレベルでの競争力を維持していくための、また、企業が進化するための原動力だからです。我々が戦う相手は、ハングリー精神で攻めてきます。かつて日本も戦後の高度経済成長期には、欧米に追いつき追い越すべくハングリー精神で戦ってきましたが、今となっては、昔のようなハングリー精神を取り戻すことは相当難しい。その分、常にSense of Urgencyを持って、視野を広げ、業界で何が起きているか、将来を含めいち早く察知していかなくてはならないのです。

ある経営者の挨拶文です。批判が目的ではないので、敢えて引用元を記しません。また上記が、”A sense of urgency”の使われ方として一般的なのかもしれません。

もしそうだとしたら、新しい”A sense of urgency”の定義を提案したいと思います。Iさんのような「急がなきゃ!感覚」をチームでじっくり醸成してから仕事にかかった方が結果的に生産性が高いことを、次回に書いてみます。