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コンセプトノート

194. ネットワーク科学と紫の牛

複雑な世界、単純な法則 ネットワーク科学の最前線では、社会を、お金のやり取りで結ばれた個人のネットワークと見なしてモデル化すると、個人がランダムに売買と投資を繰り返していくだけで大きな貧富の差が生じるという実験が紹介されていました。

その差を生じせしめるものは、金儲けの才能ではなく、最初の資産の多少だったそうです。大きな資産からはより多くのお金を投資できる(つまりより大きなリスクを許容できる)がゆえに、資産が指数関数的に増加していきます。もちろん、これはマクロに見た話。中には投資の失敗が重なって資産を失うケースもあります。

この話は『紫の牛』を思い出させました。著者のセス・ゴーディン氏は、マーケティングで最も重要なのは宣伝などではなく「商品そのものが目立っていること」であると指摘しています。まるで紫色の牛のように。
あまりむやみに敷衍するのは間違いの元ですが、商品の評判が口コミで結ばれた個人のネットワークから生まれるとすれば、似た結果が引き出せそうです。同じような商品が投入されても、やがて、すごい評判を呼ぶ一部の商品とその他大勢になる。評判を呼ぶ商品は、おそらく「リスクの高い」、つまり良くも悪くも目立つ商品なのではないでしょうか。目立つ商品は反感を呼ぶリスクもありますが、それでもそのリスクを取らなければ商品が知られず、したがって買ってもらえない。

では、自分を商品に見立てて、評判を得るにはどうすればよいか。やはり「目立つこと」と言えそうです。
目立つといっても騒ぎ立てるということではなく、人の心に残るということです。例えば「信頼できる仕事のパートナー」という存在でありたいのなら、最後まで投げ出さずに仕事をやり遂げる。能力はいまいちだが、最後まで面倒を見てくれる。そういった仕事ぶりが「目立つ」ほどであれば、それが「紫の牛」になるのではないでしょうか。