すべての行動は(自発的な行動でさえ)依頼から始まる
世の中のすべての行動は誰かに何かを依頼することから始まる。言語学者、ジョン・サールは このことを彼の著書『言語行為 (Speech Act)』で明らかにした。
― ポール・レンバーグ 『会社を変える 不合理のマネジメント』
レンバーグはサールの研究を以下のようにまとめています。「誰からも頼まれることなしに、かつ、自分がそうすると約束することなしに、誰かが何か意味あることをすることなどないということだ(何か自発的なケースなどはあるかもしれない。しかし、その時は、あなたが自分に依頼をし、自分でそれに合意しているのだ)」。
この、「すべての行動は依頼から始まる」という発想にいたく刺激を受けました。
たとえば、「今晩は考え事をしよう」と思いつつ帰り支度をしていたら、上司が立ち寄って仕事を頼んできたとします。このとき、目の前の上司の横に「自分」というもう1人の依頼主(分かりやすいように自分さんとします)が立っていて、考え事をするよう自分に依頼しているのです。だいたいの場合では、自分さんからの依頼は断って、上司の依頼を優先させると思います。
自分さんからの依頼はつねに後回しにされるだけでなく、しばしば忘れられる(年初に立てた目標も自分さんからの依頼事項です)。振り返ってみると、自分さんという依頼主はかわいそうなくらい頼み事を聞いてもらっていないのではないでしょうか。
未来の「自分さん」からの依頼
もし皆さんもわたしと同じくそう感じるのであれば、自分さんをもう少し重要人物だと思う必要があります。自分さんの依頼ばかり聞くのは自分勝手ということになりますが、他者からの依頼と自分さんからの依頼を同じくらいの重みを持って受け止め、真剣に「第三の解」を探す努力はできるはず。それが「自利利他」につながる道かもしれません。
自己投資を怠けそうになったら、これは未来の自分さんからの依頼だと思ってみてはどうでしょうか。君が約束を果たさなかったから自分はとても苦労している、と愚痴る未来の自分さんを描いてみてはどうでしょうか。
つまり「セワシくん」ですね。セワシくんは自分の生活が大変なことになっているのは先祖のせいであるとして、先祖のもとにネコ型ロボットを送り込みます。それが、のび太のところにやってきたドラえもんでした。
もちろん、逆だっていいわけです。
このチャレンジは、成功した未来の自分さんからの依頼である。
未来の自分さんからの期待に応えるために、この約束を果たそう。
わたしは……後者のほうがいいかな。