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コンセプトノート

290. 「この仕事を地下で続けよ」という意志決定法

バートランド・ラッセル(ノーベル文学賞を受賞したイギリスの思想家)は、意識から意識下に働きかけることは可能であるとして、このような例を示しています。

たとえば、私がある相当むずかしいトピツクについて書かなければならないとする。その際、最上の方法は、それについて、ものすごく集中的に――それこそ私に可能なかぎりの集中力をもって――数時間ないし数日間考え、その期間の終わりに、いわば、この仕事を地下で続けよ、と命令することである。何か月かたって、そのトピックに意識的に立ち返ってみると、その仕事はすでに終わっているのを発見する。(太字は引用者による)

バートランド・ラッセル 『ラッセル幸福論』

似たような話をお読みになったことがあると思いますし、実際に経験されているかもしれません。

睡眠が記憶を強化し、問題を解決する力をもっていることは、実験によっても確かめられています(『スキルとしての「眠っている間に決断」』『問題解決としての睡眠』)。ラッセルのスパンはもっと長く、「数時間ないし数日間」考えて、「何か月か」寝かせておくということですが、こういったやり方に一定の効果があることは間違いなさそうです。

この「地下で続けよ」メソッドの使い方について、他の文献や経験と併せて考えた、コツになりそうなことをいくつか書いておきます。

★早く取り組む。決断はぎりぎりでよい。

これはルドルフ・ジュリアーニの方法(「熟慮、しかるのち決断」)です。地下での思考には時間が掛かるようなので、早めに取り組んでおくのがよさそうですね。

★正面から取り組む

ラッセルは不安や恐怖のために目をそらしてしまうと問題は解決しないと言っています。問題を正面から見据えて考え抜いて、あとは「地下で続けよ」と命令する。そうすると、徐々に問題が問題でなくなっていく(問題に対する興味を失う)とのこと。

★三日坊主に終わっても、年始の誓いは無駄にはならない

われわれは、毎年、年末年始に「これからどうしよう」と悩んでみたり「新年からこれをしよう」と決意したりします。そのくせすぐに忘れてしまい、また次の年の年末に「ああ、また一年間が過ぎてしまった……」と嘆いたりするわけですが、それでも地下では何かが続けられているとすれば、何か整理はできているはず。なまじ続けられそうもない目標を立てるくらいであれば、年末年始に思い切り悩んで、意識的に「地下で続けよ」と追いやってしまう方がいいのかもしれません。

★意識して無意識に考えさせることが大事(たぶん)

これはちょっと自信がない考察。引用部分の前後と併せて考えると、ラッセルはかなり意識的に無意識にアクセスしようとしている気がします。「可能なかぎりの集中力」で考える → 地下で続けよと「命令」する → 「意識的に」立ち返ってみる、という表現から、それが読み取れないでしょうか。意識下のはたらきに「任せる」というより、「この仕事を地下で続けよ!」と命令してから他の仕事に取りかかる。そんな感じがよさそうです。