失敗を成長につなげる3ステップ
最近、ミーティングをすっぽかすという失敗をやらかしました。A社におうかがいして3人の方にお目にかかることになっていたのにそれを忘れ、アレンジしてくださった方から電話をいただいてもなお気づかずじまい。のんきに時候の挨拶など始めてようやくハッとなりました。
いつもの伝で、気になったことがあると関連する言葉が目に飛び込んできます。たまたま目を通していた『LIFE DESIGN』という本にも「失敗」という言葉が見つかりました。
「行きづまり思考」からの脱却を説く本書の第10章は、「失敗の免疫をつける」。失敗の免疫をつける、つまり失敗の見方を変えるというテーマです。ちょうどいいとばかりに読んでみると、演習として次のシンプルな3ステップが紹介されていました。
- 失敗記録をつける
- 失敗を分類する(不運/弱点/成長の機会)
- 成長のヒントを見つけだす(「成長の機会」について、分析と改善策を書く)
失敗を成長につなげる3ステップ – *ListFreak
記録となると、いつ・どこで・何について …… といった詳細なメモを予想しますが、本書の例は1失敗について1行で記録していくイメージでした。
失敗は「不運/弱点/成長の機会」の3種に分類します。
「不運」で起きた失敗は、気にしない。「弱点」のせいで起こしてしまった失敗は、あきらめる。大まかに言えばそう割り切り、「成長の機会」と分類した失敗についてのみ、3に進みます。つまり、分析と改善の対象とします。ずいぶんゆるい感じですが、記録しているうちに気が滅入ってしまって続かなくなるのを防ぐ工夫なのかもしれません。
イレギュラー!
せっかくなので、今回の失敗を「成長の機会」と捉えてみます。成長のヒントを得るための分析については、次の問いが挙げられていました。
- 大きな改善の余地があるものはないか?
- 教訓は何か?
- なにがまずかったのか?(決定的な失敗要因)
- 次回はどこを変えられるか?(決定的な成功要因)
何がまずかったのか?これは、わりとはっきりしています。件のミーティングは、A社で予定されていた終日研修の直後に入っていたのですが、その研修自体が急遽キャンセルになったのです。それで「ああ、明日A社に行く用事がなくなった」と反射的に思いこんでしまい、スケジュール帳で前後の用事を確認することすらしませんでした。
スケジュール調整自体は日常的にやっているのに、なぜ今回は……と考えつつ、冒頭の失敗談を友人に離したところ、「自分はイレギュラーなことが起きたときにそういうミスが出やすい」とコメントをくれました。
そう、イレギュラーという言葉がぴったり来ます。突然のキャンセルで、気になること(例:報酬は?)や対処すべきこと(例:次回の予定は?)がたくさん生じ、それらをさばいたことですっかり仕事を終えた気分になってしまったのでしょう。
「イレギュラー」という言葉から、失敗が起きがちな作業を類型化した次のリストを思い出しました。
- Hajimete − 初めての作業
- Hisashiburi − 久しぶりの作業
- Henkou − 手順や方法が変更された作業
ヒューマンエラーの3H – *ListFreak
初めての・久しぶりの・変更された、作業。どれもイレギュラーな作業です。
第三構成要素
単純なミスにどう立ち向かうかは、以前「ホワイトカラーのポカヨケ」というノートで考察しました……と言いながら、またぞろこうして自分のミスを話題にするのも恥ずかしい話ですが、今回も製造業の知見を借りてみようと思います。
『失敗は予測できる』という本に「第三構成要素」という言葉が出てきます。これは著者の中尾 政之氏の造語だと思われますが、ごく大まかに言えば、失敗するヒト(第一構成要素)と失敗の対象となるモノやコト(第二構成要素)の間に、予防的ないし強制的に介入する「第三の要素」を組み入れろという話でした。
最もシンプルな例では、寝坊して一限に間に合わない大学生の話がありました。本人(第一構成要素)の意識に訴えても確実性は低い。一限の講義(第二)を取らないか二限にずらしてもらえるならよいのだが、そうもできない。ならば友人にモーニングコールをかけてもらう手があります。この友人が、第三構成要素。
要するに、当事者や対象物からなる系(システム)の外側から介入してきてもらう仕組みを作れということです。著者がいくつかの例を挙げて強調していたのは、標語を覚えさせたり注意をするなど、本人(第一構成要素)に対する意識付けには限界がある(ので、第三構成要素を検討せよ)ということでした。
不正が起きた組織では「第三者委員会」が立ち上がったりします。不正は意図的に軌道を外れることで、失敗は意図せず軌道を外れることだと考えれば、「第三者」が機能するメカニズムも似たようなものと言えるのではないでしょうか。目標達成のために外部強制力として存在するコーチもまた、第三者の機能を果たしています。
アポイントを忘れるという冒頭の失敗に戻って考えれば、システム的なリマインダーを送る、近しい人に予定を知らせておくなど、当たり前の工夫がやはり妥当ということになります。
それで思い出したのですが、ひとりカンパニー仲間の友人が、やはり独立自営のビジネスパートナーと毎朝10分ほど話すと言っていたのを思い出しました。用があってもなくても、スケジュールや目標を確認し合っていると。彼らも、お互いを第三者機能として使っているのでしょう。