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コンセプトノート

160. 理詰めの決断が失敗する理由

サイバーエージェント社長の藤田 晋氏のコラムに、面白い文章を発見しました。

「様々な理由を考え合わせるとやった方がいい」といって始めた仕事も失敗しやすいと感じます。かく言う私も「収益的には難しいけど、長期的な取引を考えるとやっておいたほうがいいか」とか、「IR的にもいいかも」と様々な理由を考え合わせた結果、その仕事に手をつけそうになることがいまだにあります。
(藤田 晋、『自らの「失敗の法則」を知ろう』、日経ビジネスAssocie 2006/02/07号)

ここだけ読むと、
「『様々な理由を考え合わせるとやった方がいい』のなら、それはやった方がいいのではないか?」と思えます。
しかしその先を読んでみると、言わんとしていることが分かります。

 直感的に「やりたい」と思ったのではなく、理詰めでやろうと決心した仕事は、それだけ迷いがあるということ。迷いが多いものは当然危険です。途中で「失敗するかも」と直感的に気づいたのに、それまでの努力が惜しくて自分で自分を理詰めで納得させてしまう。そして失敗するというパターンもあるでしょう。思考が理詰めになってきたら要注意。

直感では判断できないから理詰めで決めよう、と思い始めた時点で、
その仕事は既に危うい。
経営者としてのセンスのようなものを感じる言葉でした。

「迷いが多いものは当然危険です」というところで、
「迷いが多くても、理詰めで考えたのならば、直感とは関係なく大丈夫なはずではないか?そう言えなければ何のための理詰めなのか?」
と考えた方もいらっしゃるかもしれません。

理詰めで考えて100%の正解が出るような問題であれば、たしかにそうです。
しかし、藤田さんの語られているような「事業」や、我々のチャレンジの多くは、どんなに理詰めに考えても100%うまくいくという保証はもらえません。

成功の確率を高める方法があるとすれば、それは当事者がコミットすることでしょう。不確実な状況下で積み重ねていく小さな決断、その一つ一つで常にベストを尽くす。粘り強く目的にあった選択肢を選ぶ、あるいは創り出す。それがコミットメントというものです。

「理詰めでやろうと決心した」だけでは、そのような高いコミットメントを継続することは難しい。だからこそ「直感的に『やりたい』と思った」仕事でなければならない。

「思考が理詰めになってきたら要注意。」
藤田さんのこの言葉を、わたしはそのように解釈しました。