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コンセプトノート

178. 本物のセールス

世界がフラット化し、物や情報が素早く流通するようになるにつれ、「創造性」の価値が高まってきた。
そして「創造」は個人の仕事であることから、「個人」に対する注目がかつてなく高まっている。
これが、「自分ブランド」が重要と言われるようになった背景でしょう。

しかし、「自分ブランド」という言葉にギラついたものを感じる方もいるのではないでしょうか。「自分を売り込むのが苦手だ」とおっしゃる方は少なくありません。

わたしも「売り込み」は苦手です。しかし独立した以上そうも言っていられません。いろいろ試したり勉強したりしていくなかで、セールスが極めて人間的な営みであり、「売り込み」的なイメージがかなり一面的であったことを知りました。

先日読んだ『すごい考え方』に、「本物のセールス」という、共感できるセールスのステップがあったので紹介します。

 もう一つ注意点がある。それは自分のこと、自分が話したい内容よりも、相手に興味を持つということだ。その人はどんな人で、何に興味を持っていて、どんな夢を持っているのだろう。そしてどんな目標を持ちながら生きているのだろう。

 それらを共有しよう。分からない部分、はっきりしない部分は質問することで明確になっていく。

(p228)

ここでいう「相手」が個人であっても企業であっても、考え方は同じです。採用面接であれば、求人企業の興味や夢や目標に興味を持つことが、採用してもらう(自分をセールスする)ための最初の一歩ということです。

その次はこんなステップになっています。

 ある程度、相手のことが分かったら、それらをまとめて言葉にして確認してみればいい。そして、そのためにあなたなら何ができるのかを提示すればいい。

つまり、

  • 相手と目標を共有し、
  • 言葉にして確認し、
  • 自分にできることを提示する。

ということ。上司が部下から相談を受けたときなど、コミュニケーション全般に使えるステップだと思います。

さて、上の方で「もう一つ注意点がある」という部分から引用を始めました。当然その前の箇所には本質的な注意点が書かれていますので、こちらも紹介しておきます。

 そもそもセールスは、セールスをする本人の価値観に基づいていなければならない。自分自身が信じられないものを売ってはならない。本心から惚れこんでいるものであれば、自然と熱意がこもっていくものだ。自分が扱いたいものや内容について話すのは楽しいことであり、それは相手にも伝わる。テクニックにこだわるよりも、あふれ出すものを大切にすればいい。あたかも子供が遊んでいるかのように。

仕事としてセールスをされている方であれば、
「そんな都合のいいものばかり扱っていられないよ」
という感想をお持ちになるかもしれません。たしかにそうだと思います。
しかし仕事ですから、扱わない自由もある。
極端な話、売りたくないなら会社を辞めるという選択ができます。

一方、このコラムで考えている商材は「自分」です。
自分の何を売るか、どうやって売るかは選べますが、
自分を辞めるという選択はできません。

そのような視点から、上記の引用は
下記のように書き直すことができます。

自分で信じていない「自分」を売ってはならない。
本心から惚れこんでいるものについて話せば、それは相手にも伝わる。
テクニックにこだわるよりも、あふれ出すものを大切にすればいい。