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コンセプトノート

505. 内なる検事・弁護士・判事

リトル・ホンダ

イタリアの名門サッカーチームACミランに厚待遇で移籍した、本田圭佑選手の言葉が話題になりました。多くのオファーからどうやってACミランを選んだかとの質問に、こう答えたのです。

「心の中のリトル・ホンダにたずねた」

“LJ”に聞いてみる」というノートで引用した、ジュリア・キャメロンの「リトル・ジュリーに質問する」話を思い出しました。

自分でどうしていいかわからないつらい状況や問題に出くわし、行き詰まったとき、私はモーニング・ページに向かい、導きを求める。自分のイニシャル「LJ」(Little Julie)を書いて、質問を投げかけるのだ。それから答えに耳を傾け、書きとめる。

『ずっとやりたかったことを、やりなさい。』

結局は自問自答なのですが、心の中に別の人格をつくることで抑圧していた望みが見えやすくなります。

別人格に仮託することで、自分の心の傾向がわかりやすく表現できることもあります。認知行動療法をわかりやすく紹介している『自信をもてないあなたへ』では、自己評価の低い人をこのように描写しています。

自分をだめだと思う人は、どんな欠陥も弱点も見逃さず、何かあれば非難してやろうと手ぐすね引いている、きわめて用心深い有能な「内なる検事」を抱えているようなものだと。

『自信をもてないあなたへ』

なるほど、検事というメタファーは強くわかりやすいですね。常に一定方向へと結論づけようとする心の傾向を見事に象徴しています。

このような強力なメタファーを思い付けば、対抗策は見えたも同然です。引き続き引用します。

内なる検事に対抗するには、被告側に証拠を提供してくれる、同じくらい強力な「内なる弁護人」が必要でしょう。

『自信をもてないあなたへ』

第3者を立てる

しかし内なる弁護士を立てただけでは、決着は付きません。迷っている人の両耳に悪魔と天使がささやきかけている、よくある漫画のような状況を作り出しただけです。何より大事なのは……

何より大事なのは、「内なる判事」を育てるということです。検察側から出された証拠のみにもとづいて断罪するのではなく、ほんとうの裁判官のように、あらゆる証拠を考慮し、公正でバランスのとれた見方をしてくれる判事です。

『自信をもてないあなたへ』

ジャッジを第3の人格として切り出すという発想がわかりやすく感じました。LJ(LittleなJibun、内なるこども)に聞いてみても、その答えを聞くのがBJ(BigなJibun、現在の自分)では、検事が裁判官を兼ねているようなものではないでしょうか。結局は大人の論理で判断してしまいそうです。

そこで、大人の論理を主張するBJの他に、内なるジャッジを設けます。ジャッジはBJ(おとな)とLJ(こども)の両方の言い分に耳を傾け、判断します。

天使と悪魔、検事と弁護士、おとなとこども。迷ったとき、どのようにことよせようとも、直接対決で決めるのではなく、第3人格(ジャッジ)を置いて決めさせる。あるいは自分がジャッジとなって決める。これは意思決定のコツとして使えますね。