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コンセプトノート

385. 伝えるために、相手と一緒に「発見」する

伝えるとは、発見を促すこと

プレゼンテーション、アサーション、ネゴシエーション、セールストークなどなど、いわゆる「伝える力」に関するスキルを伸ばしたいという願いは、定番というか永遠のテーマのようです。わたしは主に企業からの教育プログラムに関するご相談の一環としてそういったニーズを知るわけですが、学校でも非営利組織でも家庭でも、よりよく伝えたいというニーズは同じようにあるものと思います。もちろんわたし自身も自社のサービスのセールスパーソンとして、コミュニティの主宰として、あるいは親として、もっとうまく伝えたいという願いを常に持っています。

「伝える力」をどう伸ばすかは、具体的な状況や目的に応じて設計していくべきことです。ただ、「伝える」というあらゆる行為の根底には、かならずこのステップがあるという前提を持っています。

1. 発見を促す
2. 相手を支持していることを伝える

◆説得の(たった2つの)ステップ – *ListFreak
http://listfreak.com/list/756

コミュニケーションの種類が違えば促したい発見は違いますが、根本的なステップは似通っています。たとえば、

「相手はそういう気持ちだったのか」という発見を促すのがアサーション、
「このアイディアならいけるかも」という発見を促すのがネゴシエーション、
「これを買えば自分の問題は解決できるのか」という発見を促すのがセールス、

といった具合です。もっと抽象化すれば

「そういうことなのか」という発見を促すのが教育

と言っていいかもしれません。伝える達人は、
1. 相手にしてほしい発見を明確にイメージし、
2. そこに向けたステップを緻密に設計し、
3. そこに連れていく
一連の作業に長けています。

ただし、「設計し、連れていく」というのは、たとえばよく練られた演習や適切な質問によって「ああ、そういうことなのか」という発見を促すというレベルです。より深い納得を得ようとするならば、そういった操作主義的な発想では十分ではありません。

伝えるとは、受け手を理解すること

「伝える」という行為は、受け手から見れば「伝わる」ということです。
受け手に「伝わる」ということは、受け手によって「理解される」ということです。「理解される」ためには、まず受け手を「理解する」ことが必要です。「理解してから理解される」というコミュニケーションの原則は「7つの習慣」では第5の習慣に挙げられています。

たとえばセールスでいえば「あなたのビジネスはよく分からないけれど、とにかく我が社の商品の説明をするので、ニーズに合うかどうか検討してほしい」では、伝えたことになりません。受け手のビジネスを理解して、受け手の文脈のなかに商品を位置づけることによって、受け手は商品の価値を理解できるのです。

伝えるために、相手と一緒に「発見」する

相手を理解すること。発見を促すこと。この二つの「伝える」を合わせて考えてみます。

それは、ふたたびセールスのシーンで考えてみると
「わたしはあなたの立場に立つので、一緒にこの商品を検討してみてほしい」ということになります。

いまや、売り手と買い手は二人の買い手です。一人はニーズを、もう一人は商品を熟知した買い手です。一緒に、商品がニーズに合致しているかどうかを検討して、ある結論に至ります。売り手が買い手になりきって検討できたなら、この結論は、双方にとって発見のはずです。

このプロセスにおいて、売り手は買い手の「発見を促した」のではなく、ともに「発見をめざした」といえるでしょう。

結論が購入するであれしないであれ、一緒に出した結論なのですから、もはや「相手を支持していることを伝える」必要はありません。

売り手は、みずから買い手に歩み寄り、買い手の状況を理解し、さらには買い手になり、買い手とともに購入を検討することで、買い手に促したかった発見に、買い手と共に至った。ここまでくれば、買い手は「売り手のことをよく理解できた」と思えるでしょう。つまり売り手からすれば「買い手にすべてを伝えきった」と思えるのではないでしょうか。