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コンセプトノート

169. 不確かな状況を打開する、意志決定マトリクス(2)

前回は、「意志決定が難しい」状況を整理するために、選択する際の選択肢の多さと、選択した後の結果の予測の難しさの2つの軸を作りました。


┏━━━━━┯━━━━━┓
予 複┃ │ ┃
測 雑┃ (2) ← (1) ┃
さ ┃ │ ┃
れ ┠──↓──┼──↓──┨
る ┃ │ ┃
結 単┃ (3) ← (4) ┃
果 純┃ │ ┃
┗━━━━━┷━━━━━┛
少 多 曖昧

選択肢の多さ

基本的には、
1. 予測される結果の複雑さを下げる、あるいは選択肢を減らすことが出来ないか考えてみる
2. 各カテゴリに合った問題解決のアプローチを用いる
というステップで考えればよいと思います。

今回はステップ1について詳しく考えてみます。

ステップ1. 予測される結果の複雑さを下げる、あるいは選択肢を減らすことが出来ないか考えてみる

 a. 予測される結果の複雑さを下げる(上から下へ)

たとえば、違う業界への転職を考えているようなケースでは、見かけ上の選択肢は、転職「する」か「しない」かですが、このままで決断するのは難しい。なぜなら、結果が予測できないから。つまり(2)の領域にいるということです。

この場合、大きく分けて、「分ける」「縮める」「試す」の3つのやり方がありそうです。
「分ける」とは、決断の対象を小さな単位に分けること。例えば、「A業界に転職できるか」という問いのままでは難しいので、(1)業界知識はあるか (2)人脈はあるか (3)業務遂行能力はあるか というように分けてみます。
うまく「小さな問いのひとつひとつにYesと答えられれば、大きな問いにもYesと答えられる」ように分けることができれば、考えやすくなります。

「縮める」とは、意志決定のスパンを短くすること。「分ける」の一部と考えることも出来ます。例えば、「5年後にA業界で成功できるか」という問いのままでは難しいので、「5年後にA業界で成功するために、次の2年で何ができるか」というように、ワンクッション入れてみるといったことです。
影響が長期に及ぶ決断は、不確実性が高いために考えるのが難しくなります。チャレンジを時間的に縮める、あるいは複数のステップに分けることで考えやすくなるケースもあるでしょう。

「試す」とは、実際にすこし試して、フィードバックを得ること。うまく分けたり縮めたりできれば、試すことも容易になります。事業でも、多くの場合プロトタイピングやパイロットプロジェクトをやって、フィードバックを得てから本番に臨みます。個人の意志決定においても試さない手はありません。

 b. 選択肢を減らす(右から左へ)

200年以上前にベンジャミン・フランクリンが考案した方法 (Moral Algebra、精神的代数)が応用できます。ご存じの方も多いかもしれませんが、白紙の真ん中に縦線を引き、ある決断についてのPRO(メリット・賛成する理由)とCON(その逆)を書き出します。そして、相殺できそうな項目同士を見つけて消していき、どちらの欄に多くの項目が残るかを見極めていきます(このプロセスに数日をかけます)。この表は「功罪表」と呼ばれています。

比較項目を並べて相殺していくという考え方は、二者択一だけでなく、複数の選択肢から候補を絞り込んでいくときにも使えます(『意思決定の技術』では、「イーブン・スワップ法」というやり方が紹介されています)。