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コンセプトノート

271. リスクを避けた、その先にあるもの

リスクの有無を行動の基盤にしてはならない」という短いコラムを読みました。ピーター・ドラッカーの言葉を解説した文章です。

「事業においては、リスクを最小にすべく努めなければならない。だがリスクを避けることにとらわれるならば、結局は、最大にしてかつ最も不合理なリスク、すなわち無為のリスクを負うことになる」

(『創造する経営者』)

 無為のリスクとは、例えば埋もれるリスクです。何もしなければ、せっかく創出した競争優位も、他社が追いついた時点で消滅します。
 あるいは取り残されるリスクです。事業立地(誰に何を売るか)の寿命は無限ではありません。事業立地が痩せてきたときに、リスクを取って転地を目指すことができなければ、事業の継続が危うくなります。

 短期的なリスクを避けてばかりいると、大きなリスクを負うことになる。これは、事業だけでなく個人の人生においても通じる話だと思います。加えて個人の場合には、やらなかったことを後悔する気持ちが後から生じます。「後悔を最小化するという理論」で引用した『行動ファイナンス―金融市場と投資家心理のパズル』から再度引用します。

しかし、人は長期的には「ああしておけばよかった!」というように何かをしなかったことを後悔する、というのである。「人々は短期的には失敗した行為のほうに強い後悔の念を覚えるが、長期的にはやらなかったことを悔やんで心を痛めることがわかる。こうした事実はマーク・トウェインの次の格言を裏付ける。『20年たてば、したことよりもしなかったことを嘆くようになる。』」

 冒頭のコラムでは、リスクとの付き合い方を的確な言葉で表現していました。

 「リスクは行動に対する制約にすぎない」。

 これはいいですね。

 リスクの小さそうな道を選ぶのではなく、まず道を選ぶ。
 次に、その道を行くときのリスクをどうやって小さくするかを考える。

 そのような態度でいることで、リスクを過剰に意識してしまう思考回路を修正できそうです。