カテゴリー
コンセプトノート

010. ジェロントロジーと起-動線

何年か前に通った某起業家養成スクールのOGとお会いする機会があり、非常に興味深いお話を伺うことができました。彼女はメーカーで社員の人材教育・業務指導を行う部門でキャリアを積み重ねるかたわら、ジェロントロジーの研究をしつつ、シニアライフアドバイザーの資格を取り、会社以外での社会活動も活発に行っている方です。会話の中で起-動線との大きな接点を感じるコメントをいただいたので、引用しながら所感を述べてみます。

*「ジェロントロジー」って何のこと? 
ジェロントロジーとは学問の名称で、人口の高齢化によって起こる様々な変化や問題を解決するために、医学・心理学・生物学・経済学・政治学・社会学などの自然科学、社会科学を統合することによって生まれた学問のことです。何やら難しそうですが、言い換えると、人の加齢に関わる諸問題を総合的視野に立って探求する「長寿社会の人間学」のことです。
そして、ジェロントロジーの基礎を学び、健康、お金、生きがい、家庭生活の諸問題など中高年齢者の生活全般に関して総合的に相談を受けることができる相談員としての技能を有する人がシニアライフアドバイザー(SLA)です。

人生80年時代、定年退職後、あるいは子育てが終了した後に約20年もの人生があるのです。この長いシニア期は、もはや決して「老後」ではなく、「新しいライフステージ」と呼ぶべきで、この期間を健康で、経済的に困難がなく、生きがいをもって生きることが非常に大切なことです。そして、そのためには若いうちから加齢に伴う心身の変化、資産形成の方法、生活を楽しみ生きがいをもって生きるための方策について学び、備えをする必要があります。この分野の研究が進んでいる米国では、ほぼ全ての大学でジェロントロジーが必修科目となっており、一生涯を網羅した総合的人生プランについて考える機会が与えられています。老いることによる心身の変化、年齢の変化に沿った自己実現のあり方、退職後の人生の楽しみ方、長期資産形成の方法論、こうした学習を行うことにより、広い視野に立ち、深い思慮にもとづいた人生の絵を描く術が身につき、また、高齢者への理解や配慮も深まるのです。アメリカ人でアーリー・リタイヤメント(早期退職)を行う人が多いのもこのためで、早いうちから仕事以外で自分を活かす道や人生を楽しむ方法を見つけて、それを実現するための備えを十分に行っていたからこそなのです。ところが日本では、何十年もの間、仕事や子育てが人生最大かつ唯一の目的となってしまって、それらの使命が終わると生きる目的を失ってしまう人が多いのが現状です。というのは長い間、画一的な人生観や社会感に縛られていたからなんです。だから若いうちにジェロントロジーのエッセンスを学ぶことで、その効果が最大発揮されるのですよ。

「新しいライフステージ」(シニア期)を充実したものとするためには、早いうちから実現するための多様な選択の道について考え、備えを行うように、というのが大きなメッセージだと思います。
起-動線が考えている充実した人生の姿、「ありたい自分を知って・自分を伸ばし、自分を活かす場があり、経済的な展望があって・心身の健康に憂いがなく・生活を楽しむ余裕がある」、そしてこうした姿に近づくためのチャレンジを考えるための方法論をツール化した「自分ナビ」作成プログラムは、ジェロントロジーのような学問を意識して創り上げられたものではありませんが、その根幹的なエッセンスを取り込んであるものだと認識させてもらいました。

どのような構想とチャレンジを持って、将来に繋がる現在を生きていくのか。「80歳の自分」がそれまでの40年間、50年間の自分を総括する姿をイメージしてみるなんてことも考え方の切り口としておもしろいかもしれません。「80歳の自分」は、どのような生き方をしてきた自分に対して合格点をつけてくれるのでしょうか。

※ 「自分ナビ」作成プログラムは提供を終了しています