2009年最後のノートなので、来年の研究テーマに据えたいと思っている感情知能(Emotional Intelligence)について、頭出しをしておきます。
いわゆるEQ理論(EI model)の提唱者であるピーター・サロベイ教授とデイビット・カルーソは、著書『EQマネージャー』で感情に関する六つの原則をまとめています。
- 感情は(客観的で観測可能な)情報である
- 感情を無視したり抑えようとしても、うまくはいかない
- 人は自分が考えるほどうまく感情を隠すことはできない
- 効果的な意思決定をするためには感情を組み入れる必要がある
- 感情(の動き)は論理的な流れに従う
- 感情の普遍性が存在すると同時に、特有性も存在する
EQの六つの基本原則 – *ListFreak
2、3、6は感覚的にうなずけます。1、4、5は直感的には理解しづらい部分もありましたが、よく考えてみるとなるほどと思わされます。
「1. 感情は(客観的で観測可能な)情報である」に関しては、同書の「感情は思考を妨げる成り行き任せの支離滅裂な出来事ではない。」という一文にハッとさせられました。言われてみればたしかにそうです。感情は何かの刺激が原因となって生起するもので、突然理由もなく怒りを感じたり、悲しくなったりはしません。感情は移ろいやすいために測りがたいものではあっても、デタラメに浮かんでくるものではありません。
「4. 効果的な意思決定をするためには感情を組み入れる必要がある」。起-動線的にはもっとも突き詰めて理解したい原則です。「純粋理性の限界(感情が働かない患者の話)」というノートに書いたのは、純然たる理性だけではうまく決められないという側面でした。サロベイらはさらに、感情をうまく活用することで効果的な思考や意思決定ができるようになると主張しています。
「5. 感情(の動き)は論理的な流れに従う」も、言われてみればなるほど!という原則です。例えばわれわれは「むっとする」「いら立つ」「イライラする」という感情を経て、何かのきっかけで「怒り」を爆発させます。状況によっては怒りが怒りを呼んで「激怒」まで行くかもしれません。あるいはどこかの段階で「怒りが鎮まっていく」かもしれません。また「驚き」という感情は長続きせず、すぐに他の感情が取ってかわります。感情の流れにある一定の順序があることは、誰しも体感するところでしょう。それを知識として理解したうえで、自分や他人の感情を観察し、適切に調整・利用できれば、感情に振り回されず、適切に利用していけそうです。