「誰が」「どういう文脈で」それを言うのか
ある企業のリーダーシップ研修にコーチとして参加しました。参加者はシニアマネジャー/マネジャー/メンバーといった擬似的な階層をに作り出してプロジェクトを遂行します。その過程で、それぞれが果たすべき役割や壊すべき役割意識について、探究します。コーチ役は一切の操作や誘導をしないので、すべての学びは自発的に起きます。とはいえ、考えを深めてほしいポイントはいくつかあり、そこに向けた問いかけを練るのがコーチ役の仕事になります。
わたしはシニアマネジャーの担当だったのですが、その回の参加者に対しては「いまの状況をマネジャーから見たらどうか?」という問いかけが届かず、焦っていました。届かないという意味は、問いかけを受け止めてはくれるものの、それについてほんとうに考え抜くには至っていないということです。
そんな状況をマネジャー担当のコーチ(Aさんとします)に話したところ、Aさんはある手を打ってくれました。シニアマネジャーが協議している場所にふらっと立ち寄り、マネジャー担当コーチからの質問というかたちで、同じ問いかけをしたのです。
その場面を脇から見ていて、Aさんの問いかけが強い内省のきっかけになったことが手に取るように分かりました。もちろんAさんのクエスチョニング・スキルが高かったという理由もあるでしょう。しかしそれ以上に、問いかけが「誰によって」「どういう文脈で」発せられたかという違いが、その気づきの違いを呼んだように思いました。
「伝わる」ための7要素
何かが「伝わる」とき、そこには7つの要素が関係しています。
- 送り手 ― ゴールによっては、あなたが最善の送り手とは限らない。
- ゴール(送り手が望む、受け手の変化や行動) ― 「送り手が伝えたこと」ではなく、「受け手に伝わったこと」が「伝達されたこと」。
- 受け手 ― 単数なのか複数なのか。直接伝えるのがよいか間接がよいか。
- 状況(背景・文脈) ― 受け手は状況をどのように理解しているか。
- コンテンツ(内容) ― 論理的に。何かを「伝えない」というコンテンツもある。
- モード(伝わり方) ― 「伝える」だけでなく、受け手に発見してもらうこともできる。
- チャネル(手段) ― 他の6要素の選択によってある程度絞られる。自分の好き嫌いは二の次。
「伝わる」ための7要素 – *ListFreak
上で紹介したケースでは、「送り手」と「状況」が違っただけで、同じ「内容」
でも伝わりかげんが大きく違いました。
受け手に伝わったことがすべて。大事なメッセージを伝えるときには
この7要素を注意深く選択すると同時に、相手への伝わりぐあいを
観察しながら、さまざまな組み合わせを試してみるべきでしょう。