「もっとも厳しい質問」に備えよ
想定してなかったような厳しい質問、あるいは想定はしていたけれど考えるのを無意識のうちに避けていたような質問をされて、絶句。そこから相手にペースを握られてしまい、交渉を思うように運べなかった。誰しも、そんな経験があると思います。
ハーバード大学ビジネススクールで交渉学を教えるジェイムズ・セベニウス教授は『「もっとも厳しい質問」への準備はできているか?』という記事で、そのような質問をどう想定し、対応すべきかを論じています(1)。その流れを、見出しを翻訳しつつ紹介します:
1. 「もっとも厳しい質問」を想定する
2. 多様な回答を考え、最善のものを選ぶ
3. どう答えるかを練習する
4. 相手をよく観察し、回答を調整する
5. 質問に答える以外の選択を考える
興味を引かれたのは、1でした。どのような質問が「もっとも厳しい質問」たり得るのか。記事を要約してリスト化したものをお目にかけます。
- 候補:「他の選択肢はありませんか?」
- 約束:「間違いなく仕事に専念できますか?」
- 底値:「最低、いくらまでなら譲歩できますか?」
- 二択:「これが私の最終案です。是か非か、今ここで答えてもらえますか?」
- 本音:「これを売ろうとする、あなたの本当の理由は何ですか?」
- 経験:「あなたはこの仕事の経験が十分ではないのでは?」
交渉の前に考えておくべき「厳しい質問」 – *ListFreak
回答を考えるのに精神的なエネルギーが要りそうな項目が並んでいます。ここまでぶしつけな表現ではないにせよ、たしかに聞かれてもおかしくない項目のように思います。
決断における「もっとも厳しい質問」とは
「もっとも厳しい質問」に備えるというアプローチは、意志決定にも使えます。わたしのお気に入りの自問リストはこれです:
- 完全に合理的な人は、どう決断するだろうか?
- 80歳になった自分が過去を振り返ったとき、この決断をどう思うか?
- あと3年で死ぬとしたら、どのような決断になるか?
- (尊敬する人の名前)なら、どう決断するだろうか?
- (尊敬を失いたくない人の名前)に自分の決断が間接的に伝えられたとき、この決断をどう見るだろうか?
大きな決断をするための、5つの問い – *ListFreak
比べてみると、先に紹介したリストは質問の具体的な内容を列挙していますが、私の決断リストは「○○さんはどう思うか」といったかたちになっています。前者は「何についての」、後者は「誰からの」質問なのかに焦点が当たっていると言えるでしょう。
これまでは「完全に合理的な人」や「80歳の自分」をイメージして「どう思うか」だけを考えていましたが、そういった人たちが決断を下そうとしている自分に「何を」問いかけるのかを考えてみることで、より厳しい自問の枠組みが作れそうです。年末年始の休みにすこし考えてみたいと思います。
(1) Sebenius, James K. “Are You Ready for the ‘Hardest Question’?” Negotiation 15, no. 11 (November 2012): 4–5.