コミュニケーションはメッセージの伝え合いです。リチャード・ファースンは、コミュニケーションに付随して伝わる「隠れたメッセージ」があるといい、それに「メタ・メッセージ」という名前を付けています。これは単に話し手の感情などの「言外のメッセージ」ということではなく、「メッセージが伝えられた状況や文脈そのものもメッセージである」というような意味です。
大人は子供の時に教えられたことの多くを憶えてはいない。(略)
しかし、隠されたカリキュラムの中で教えられたことは皆、忘れないで憶えている。われわれは学校で、静かにして座っているとか、手を挙げるとか、順番に並ぶとか、目上の人の権威には従うとか、許可を得ることなどを学んできた。(略)
人間生活の全ての側面において、この「メタ・メッセージ」は、メッセージそのものよりも強力になりやすい。
『パラドックス系―行動心理学による新ビジネス発想法』
ファースンはもう一つの例としてマネジメント研修を挙げています。内容はどうあれ、会社は社員にそういった研修を受けさせることで「マネジメントは研修で学べる技術である」という「メタ・メッセージ」を伝えているというのです。もちろんこのメタ・メッセージは、一部は正しいかもしれませんが、誤っています。
メッセージの出し手が暗黙のうちに持っている前提は相手に伝わってしまうし、むしろそちらの方が強く残る。これは経験的に頷けますし、面白い着眼です。
小学校から過去に勤めた会社まで振り返って「何を学んだか」と考えてみます。すると、複数の組織に属したことで、あるいは海外で仕事や生活をしたことで、見えてくるものがあることが分かります。「あそこの空気からは、ああいうメタ・メッセージを受け取っていたのだな」ということが、なんとなく感じられます。それは暗黙の前提となり、自分の感情や思考の枠組みに大きな影響を与えているはず。下のようなことを考えておきたいと思いました。
・自分のコミュニケーションスタイルが相手にどんなメタ・メッセージを送っているかを考えてみること
・相手がどんな暗黙の前提を持っているかに注意を払うこと
・ときどき、故意に環境を変えること