「資格試験も、事前のトレーニングもなかった。ある日、そうなってくれと言われて、なることになった」
ある組織のマネジャーが、マネジャーになったときのことを振り返って、そう言っていました。
我々が人生で演じる役割の多くは、望んでいた役であろうがなかろうが、ぶっつけ本番です。マネジャーはおろか、最高の職位である社長もそうですよね。「候補として」「次期社長含みで」という形で準備期間を設けるケースもありますが、候補と本物はまったく違います。生活上の役割も同じこと。夫(妻)や父(母)になるために資格試験に合格しなければならないとか、インターン期間を経なければ免許がもらえないとかいうことはありません。
大事な役割であっても、試験もトレーニングもない。上のマネジャーの発言かは、わたしに二つの新たな気づきを与えてくれました。
一つは、自分の体験をよく観察し、そこから学び取って適応していくことを、不断に・意識的にやっていくべきであること。「変化への適応」は、学校生活から学ぶチャンスがないとは言いませんが、積極的に授業で教えてくれることではありません。社会人になってから磨く(磨き続ける)べきスキルの一つです。
もう一つは、「まだ準備ができていないから」という言葉が、行動しない言い訳として常に使える便利な言葉であること。どちらにせよ準備期間が設けられることはほとんどありません。必要なのは、新しい環境で起きる変化に適応していこうと思える心の準備です。