仕事あるいは生活で困難な選択(Hard Choice)に直面した23人の、決断の事例集を読みました。置かれた状況も選択に至るプロセスももちろん人それぞれ。しかしそこには、ある種のパターンが見出せる気がしました。
例えば、中立さを理念に掲げている業界誌の経営者の話。あるとき、顧客企業から自社商品を採り上げるよう圧力を受けました。業界で最大手であるばかりでなく、その業界誌にとっても最大手のスポンサーです。
ポリシーを曲げて記事を書くか。しかし、それでは創業した意味がない。
頑としてはねのけるか。しかし、その顧客を失っては経営が成り立たない。
我々は往々にして、置かれた状況を二者択一問題として理解しがちです。
しかし、一方を選ぶことは必ずしも他方を捨てることではありません。
よい意志決定ができる人は、常に「第三の解」を模索しているようにみえます。
上記の例で言えば、経営者はその企業が重要な顧客であることと、同時に雑誌にとって中立さが重要であることを、繰り返し繰り返し、説明します。読みながら、「もう断るか書くか、選ぶしかないだろう」と何回か思いましたが、経営者は辛抱強く両立を目指します。
経営者は最終的にポリシーを貫き、失注を告げられます。しかしどんでん返しがあって契約は存続し、より親密な関係を築くに至りました。
彼の成功要因を敢えて読み取るとすれば、
「もう一段高い目的」を見出し、第三の解を探そうとしたことにあると言えそうです。
中立を貫くことも重要。企業を維持することも重要。しかし、単に両者が重要と言うだけでは、顧客との利害衝突は解消されません。
中立な雑誌の存在は、顧客企業を含む業界全体に資するものであり、長期的には顧客企業にもメリットをもたらす。その高い視点から説明できたことが、顧客をして納得せしめたのだと、思います。
(参考)
“The Book of Hard Choices: How to Make the Right Decisions at Work and Keep Your Self-Respect”
ザ・ゴール 2 ― 思考プロセス
(利害衝突の解消の方法論が載っています)