先日ご紹介したスピカ降矢さんの話の中で、一つのキーワードを拾いました。過剰、という言葉です。(これはパン屋さんに限らない話だと思いますが)食品小売業はとにかく「過剰」になりがちで、私たち消費者を満足させるために新鮮な食材を常に絶やさない努力を重ねた結果、大量のムダが発生しているそうです。POSシステムなどテクノロジーによる徹底的な売れ筋管理で適時最適生産への努力も重ねられているはずですが、私たちの要求品質がそのスピードを上回ってしまっているのでしょうか。
面白かったのは、同席されていたミュージックセキュリティーズという音楽の原著作権を証券化するベンチャーの小松さんという方がこの発言に反応され、音楽業界でも同じであると話されていたことです。小松さんはご自分がアーティスト出身という経緯もあり、音楽が「コンテンツ」として過剰に生産され消費されていく現状を憂えていました。今の世の中では「コンテンツ」と名がつくものは常に新鮮でやや過剰なくらいに供給されていないとサイトの賑わいを保てないのが常識とされていますから、たしかにコモディティとしての食品に通じるところがあります。
人生戦略に関わる情報についても状況は似ています。キャリアサイトに行けば適職診断あるいは年収査定、金融情報サイトに行けば豊富な商品解説とFPの方々のコラム、情報がこれほど大量かつ無差別に飛び込んでくる環境の中で、時々立ちすくんでしまうことはありませんか。似たような情報を大量に摂取することで却って記憶が混乱してしまうことを重畳効果といいますが、ネットを巡っているとまさにこれが体感できます。
私たちは「意志決定の枠組みを持つこと」が、自分がいま必要としている情報をすくい上げるための最善の方法だと考えます。情報を得ることと、その情報を基に自分が「選択する」「意志決定する」ことは違うことです。答えを求めて際限ない情報スキャンに陥ってしまう人の誤謬はここにあります。情報という素材は適切な考え方のフレームワークの中に収められ、自分の判断基準で評価され、始めて意志決定の有用なインプットとなり得るものなのです。「自分ナビ」作成プログラムで私たちが皆さんと共有すべく取り組んでいるのはまさにこの「悔いのない意志決定をくだすための総合的な枠組み」をツールキットとして提供することであり、結果として自分に有用な情報に対して鼻が利くようになることを支援することです。
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