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コンセプトノート

639. 四絶

思考の生活習慣病

講義などで、ときどき船川 淳志『考えるプロが明かす「思考の生活習慣病」克服法』(講談社、2004年)から次のリストを引用します。

  1. 思考の放棄 ― 「これだけの情報では無理ですよ」などと口にして、自ら考えることを止めてしまう
  2. 思考の依存 ― 「だって、社長が言ってますよ」と人の頭に頼ってしまう
  3. 思考の歪み ― 推論の過程にムラや無理がある
  4. 思考の偏り ― 特定のことについては効果的に推論できるが、ちょっと専門分野がそれると思考力が機能しなくなる

思考の生活習慣病*ListFreak

著者は前2者を「思考停止系」、後2者を「思考不全系」と分類していて、これも納得。

四絶

項目数4といえば、リストフリークのわたしは『論語』子罕(しかん)篇の「四絶」を連想します。守屋 洋、守屋 淳『中国古典の名言録』(東洋経済新報社、2001年)から引用すると:

  • 意(主観だけで憶測すること)なく、
  • 必(自分の考えをしゃにむに押し通すこと)なく、
  • 固(一つの考えだけに固執すること)なく、
  • 我(自分の都合しか考えないこと)なし。

四絶*ListFreak

孔子はこれらの欠点から免れていたとのこと。

とてもよいリストだと思うのですが、意・必・固・我では、なかなか日常生活の中で思い出せません。そこですこし解釈をしてみます。

まずは平たい言葉に置き換えてみます。

  • 憶測しない。
  • 自説に執着しない。
  • こだわらない。
  • 利己的にならない。

第2項目(必)と第3項目(固)は、意味が似ています。実際、漢和辞典では必が「自説にしがみつくこと」で、固が「かたくななさま」(漢辞海 第三版)なので、固は必を含むような意味合いを持っています。

「~しない」だけでなく「~すべき」を加えて、望ましい思考態度のリストに調えてみます。

  • 「意なく」、つまり憶測でなく事実に基づいて考える
  • 「必なく」、つまり硬直的でなく柔軟に考える
  • 「固なく」、つまり一面的でなく多面的に考える
  • 「我なく」、つまり利己的でなく共創的に考える

「我なく」、つまり利己的でなく、どう考えるべきか。単純に反対語を考えると利他的となりますが、単純にはいきません。自己の視点が不要というわけではないので。そこで新語の力を借りて共創的を選びました。協同的でもよいのですが、字から受けるイメージが望ましい思考態度を想起させやすいので。

というわけでやや意訳が入りましたが、だいぶ使い勝手が良くなりました。ついでに、確実に思い出せるように、思いきって3か条に縮めてしまいます。

現実的に、柔軟に、共創的に、考える。