怒りの10段階評価
わき上がる情動をやり過ごす。これまで「シックスセカンズ・ポーズ」や「ラベリング」といった手法(「6秒間で思慮深さを取り戻す」)を紹介しつつ、実践してきました。先日読んだ『「怒り」のマネジメント術』(安藤俊介)では、怒りをレベル分けすることを勧めています。その目的はラベリングと同じく、情動を客観視することと、時間を稼ぐことにあります。
『イラッとか、カチンとか、ムカッなどの怒りの感情を感じたら、それがどの程度の強さなのかを、0~10段階のレベルに分けてみるのです。』という文章を初めて読んだときには、「ちょっと無理ではないか」と感じました。怒りという複雑な感情を1次元のスケールで、しかもそんなに細かく、分けられるものでしょうか。そもそも怒りの感情を感じたならレベル0ではあり得ないのに、「0~10段階のレベルに分けてみる」って、論理的におかしいだろう!と、ちょっとイラッとしてしまいました。
著者は、あくまでもサンプルとことわった上で、次のような例を挙げています。
0点………… 穏やかな状態
1~3点…… イラッとする、不愉快、うっとうしい
4~6点…… 怒り、イライラする、腹が立つ
7~9点…… カーッとする、動揺する、激怒、爆発寸前
10点………… 爆発、震えが止まらない、憤怒
読みながら試行してみると、意外にできそうに思えてきました。怒っていない状態(0点)と規格外の怒り(10点)を除けば9レベルです。3点きざみに強中弱、さらにそれぞれを強中弱と分けていけばよいのです。たとえば大分類をこんな感じにします。
1~3…弱:内なる怒り(表明せずにやり過ごせる程度の怒り)
4~6…中:制御して表す怒り(怒りを表明するが制御可能)
7~9…強:制御できない怒り(怒らずにはいられない状態)
さらに、弱についてのみ細分化してみます。
1…弱の弱:違和感。効率の悪さや理に適っていない状況に出会ってムムッと感じるとき。
2…弱の中:批判的。理不尽さやマナー違反などを目にしたときのモヤッとした気持ち。
3…弱の強:不愉快。それを「怒り」と実感できるくらい強い情動。ただし顔色を変えずにやり過ごせる。
こうしてみると、上述の「10段階なんて細かすぎるだろう!」という気持ちは、1(違和感)で始まり2(批判的)にエスカレートしたと言えそうです。その後自分で吟味してみて、めでたく0に戻りました。
自分の感情を細やかに識別し、適切な言葉で表現する。これは「EQ(感情知能)の4ブランチ」における第1ブランチ(感情の識別)および第3ブランチ(感情の理解)にほかなりません。3×3で考えることによって9段階、さらにそれを突き抜けた段階も入れて10段階もの感情の強弱を識別できそうだという実感は、トレーニング意欲をかき立ててくれる発見でした。
迷いの10段階評価
この発見を当サイトの興味に当てはめてみると「迷いの10段階評価」とでもいうべきトレーニングが考案できそうです。たとえば転職するかしないか決められない、つまり迷っているとしましょう。迷いというのは複雑な心理で、単純に1次元のスケールで評価するのは難しいですが、そこを敢えてやってみます。
0が迷いなし、つまり転職しないと決めている状態。10は大混乱・思考停止状態としましょう。大分類はこんな感じでしょうか。
弱:決めているけど迷う(一抹の不安、最善の選択と言えるのかという気持ち)
中:決め方に迷う(選択肢が多すぎる、決め手に欠く)
強:決めるべきかどうか迷う(考えが二転三転する、苦悩する)
漠然とした迷いを可視化・言語化できれば、それだけで迷いのレベルも1つくらい下がりそうです。決断力向上トレーニングとして使えるかどうか、評価してみたいと思います。